「減らない受注残」「第7波」で、どうなる自動車業界? 2022年7月の新車販売を分析

公開 : 2022.08.02 05:45

7月の新車販売レポートです。コロナの第7波、終わらない生産調整、原材料費の高止まりに揺れる夏。販売実績の数値を検証してみましょう。

登録車 トヨタのライン停止で低水準に

執筆:Naojiro Onuki(大貫直次郎)

半導体などパーツの供給不足の長期化に加えて、新型コロナウイルス感染の第7波によって生産ラインおよび物流の従事者の確保が困難な状態となった日本の自動車業界。

2022年7月の国内新車販売台数は、そのマイナス要素が数字となって示された(自販連/全軽自協調べ)。

RAV4、ハリアー、カローラクロスなど、トヨタの人気SUVの生産が不安定なか、日産が新型エクストレイルを発表。7月25日発売とあって、夏以降の中型SUV市場の動向は注目だ。
RAV4ハリアーカローラクロスなど、トヨタの人気SUVの生産が不安定なか、日産が新型エクストレイルを発表。7月25日発売とあって、夏以降の中型SUV市場の動向は注目だ。    日産

7月の登録車の新車販売台数は、前年同月比13.4%減の21万4134台と11か月連続でのマイナス。

一方、7月の軽自動車の国内新車販売台数は、前年の落ち込み(2020年同月比17.0%減の13万366台)の反動もあって同3.8%増の13万5201台と14か月ぶりのプラスとなった。

結果として、トータルでの国内新車販売台数は、同7.4%減の34万9335台と13か月連続での前年実績割れ。

ただし、軽自動車の健闘もあって、マイナス幅は2022年度で最小(1月14.2%減、2月17.9%減、3月16.3%減、4月14.3%減、5月18.1%減、6月の10.3%減)に抑えた。

登録車の7月のブランド別新車販売台数では、部品供給不足などの影響が小さかったブランドが前年実績超えを達成。具体的には、日産が同6.1%増(2万4459台)、マツダが同43.7%増(1万2523台)、スバルが同48.2%増(9332台)、スズキが同9.7%増(7442台)、三菱自が同181.3%増(5255台)、ダイハツが同14.6%増(3774台)とプラスを記録する。

一方、トヨタは同26.3%減(9万7364台)、ホンダは同1.2%減(2万5339台)、レクサスは同23.9%減(3578台)と低迷。

以上の結果を見ると、前月と同様、通常では登録車全体の50%強のシェアを占めるトヨタ系のブランドが、生産ラインの一時稼働停止によって販売台数を大きく落とし、その影響が登録車の新車販売台数の低水準につながった、と分析できる。

軽はダイハツがシェア1位 業界の声は?

軽自動車の7月のブランド別新車販売台数では、前年同月比7.1%減ながら4万3321台を記録したダイハツが3か月ぶりにシェアトップを獲得。

2か月連続で首位の地位にいたスズキは、同10.0%増と健闘したものの4万108台にとどまって第2位に陥落する。

フルモデルチェンジされた「ダイハツ・ムーヴ・キャンバス」。手前がストライプス、奥がセオリー。
フルモデルチェンジされた「ダイハツ・ムーヴ・キャンバス」。手前がストライプス、奥がセオリー。    AUTOCAR JAPAN

また、日産は同62.8%増(1万6166台)、三菱自は同4.8%増(3308台)と前年実績超えを達成。ホンダは同6.6%減(2万5158台)と、マイナスが続いた。

一方でOEM供給を受けるブランドは、トヨタが同16.1%増(3451台)とプラスを記録。対してマツダは同11.1%減(2219台)、スバルは同14.7%減(1462台)と苦戦した。

業界関係者に訊く 今後の見通し

7月の新車販売について業界団体の関係者は、「7月は半導体などの部品供給不足の長期化に加えて、新型コロナウイルス感染者および濃厚接触者の増加による生産ラインの一時稼働停止の発生によって、多くのブランドが生産調整を余儀なくされた。その結果、新型車や人気車の受注に対応し切れず、最終的に新車販売の前年実績割れが続いた。一部車種では受注の停止や注文契約の取消要請も起こっている」と指摘する。

今後に関しては、「受注は新型車を中心に堅調。8月以降も販売台数を伸ばしそうな新型車や特別仕様車が鋭意発売される予定なので、プラスを回復する可能性は十分にある」

「生産現場の一時稼働停止は今後も発生する見込みだが、海外を含めたサプライチェーンの混乱は改善しつつある。一方で不安要素としては、ウクライナ情勢に伴う原材料の供給不足や価格の高止まりの継続、そして新型コロナウイルスの感染者数の増加傾向などが挙げられる。今後を見通すことは依然として困難な状況にあり、中期的にみると受注残を抜本的に解消できるだけの生産体制の実現は、もう少し先のことになりそう」と予想した。

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  • 執筆

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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