世代交代しても1番イイ ホンダ・シビック・タイプRへ英国試乗 熟成された能力 後編

公開 : 2022.12.02 08:26

11代目へ進化したホンダ・シビックのタイプRが英国上陸。先代同様ホットハッチの王者と呼べるのか、英編集部が確認しました。

個別設定のインディビジュアル・モードも

新しいホンダシビック・タイプRの車内には、身体を保持しつつも快適なシートに、金属が露出したペダル、トレードマークといえるアルミ削り出しのシフトノブが与えられている。ステアリングホイールはキレイな円を描き、アルカンターラが巻かれている。

ダッシュボードの中央には、インフォテイメント用のタッチモニターが据えられている。ソフトウエアの仕上がりは素晴らしいと呼べる程ではないものの、スマートフォンとのミラーリングに対応し操作性は悪くない。

ホンダ・シビック・タイプR(欧州仕様)
ホンダ・シビック・タイプR(欧州仕様)

エアコンには独立した操作パネルが存在し、ステアリングホイールのスポーク部分にも実際に押せるハードボタンが並んでいる。シフトレバーの隣には、ドライブモードのスイッチがレイアウトされている。しっかり押した感覚があって好ましい。

コンフォートとスポーツに加えて、荒々しい+Rモードも選べる。タイプRとしては初めて、エンジンやステアリングホイール、ダンパーなどの質感を個別にドライバーが変更できる、インディビジュアル・モードも用意された。

今回の英国試乗では、サーキットに加えて公道での運転も許された。だが、どちらも路面は濡れていた。

発進前に、ホンダのテストドライバーが筆者に声を掛けた。ドライブモードに関わらず、朝イチの不慣れなサーキットでタイヤが冷えていても、扱いやすいと感じました。運転が簡単なクルマだと思いますよ、と。

熟成された運動神経でより親しみやすい

走り出して、彼は正しいと思った。シビック・タイプRは、ドライバーに安心感と自信を与えてくれる。第一印象は、トヨタ86が新型のGR86へ進化した時と同じく、やや人工的なドライビング体験だな、というものだったが。

滑らかに回るステアリングホイールは負荷が高まるほど重みも増し、鮮明に反応する一方で、トルクステアはほぼ感取されない。手のひらへは、フロントのトラクションの状態がフィードバックとして明瞭に伝わる。情報量は豊かだが、どこかデジタル感がある。

ホンダ・シビック・タイプR(欧州仕様)
ホンダ・シビック・タイプR(欧州仕様)

これほど高精細な感覚を得るためには、油圧パワーステアリングでは難しいだろう。電動だから可能なのだと思う。さらにエンジンサウンドは、一部がスピーカーを介して合成的に車内へ響く。

だとしても、素晴らしい動的能力が宿っていることに変わりはない。しなやかなサスペンションのおかげで、路面状態を問わず能力の幅は大幅に広げられたようだ。

コンフォートモードでは、先代のシビック・タイプRのような硬さは払拭されている。一方で、スポーツや+Rモードでは引き締まり、シリアスなホットハッチであることを主張する。これまでは思い描くしかなかった、落ち着きも備わっている。

それでいて、間髪入れない反応の鋭さやドライバーズカーとしての訴求力は失っていない。スリリングで一体感の強いドライビング体験でありながら、より熟成されている。運動神経を磨きつつ、より親しみやすい性格へ成長したといえる。

記事に関わった人々

  • マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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