Jr.スーパーカーの煌き フェラーリ328 ランボルギーニ・ジャルパ ロータス・エスプリ 3台を比較 中編

公開 : 2023.02.05 07:06

フェラーリとランボルギーニが提供していたジュニア・スーパーカー。同時期のロータスとともに、英国編集部が魅力を振り返りました。

冷間時でも驚くほど扱いやすい328GTS

改めて1980年代のジュニア・スーパーカー、3台を眺めてみる。フェラーリ328 GTSのボデイサイドにえぐれた円錐形のエアインテークやリアガラスの処理は、明らかにディーノ206GTからの影響を感じる。

しかし存在感の強さは、1973年にリリースされていたベルリネッタ・ボクサー、365GT4 BBのものに近い。平滑なボディ面の処理と、ウエストラインで上下に分かれる構成などは、間違いなく共通する特徴といえる。

左からランボルギーニ・ジャルパ、ロータス・エスプリ・ターボ、フェラーリ328 GTS
左からランボルギーニ・ジャルパ、ロータス・エスプリ・ターボ、フェラーリ328 GTS

アスファルトとの距離を近づけているフロントスカートとサイドスポイラーは、当初の純粋なデザインを濁しているように思える。それでも、よりワイドでアグレッシブな容姿のライバルと伍するには、欠かせない要素だろう。

ドアを開き、クリーム色の繊細な造形のシートへ腰を下ろす。案の定、右ハンドル車のドライビングポジションは快適と表現しにくい。

ペダルが左側へオフセットし、サイドボルスターが太ももに当たるほど足の位置は斜め。ステアリングホイールを正面で握るため、身体は拗じらざるを得ない。手元へ伸びるその角度も、ベストとは呼べないだろう。

しかし、冷間時でも驚くほど扱いやすい。深く輝くシフトゲートへレバーを倒しながら、狭い市街地の道を恐れずに運転できる。シャシー・マナーは穏やかで、長距離運転もこなせそうな自信が湧いてくる。腰痛を伴うとは思うが。

すべてを忘れるレーシングカー然とした咆哮

しっくりこない姿勢を忘れる最良の手段は、右足へ力を込めること。3.2L V8エンジンの熱狂的な振る舞いを味わえば、すぐに気は紛れる。球形のシフトノブで1つ下のギアを選べば、余計な考えは吹き飛ぶ。

スピードは関係ない。20km/h程度で農道を走っていても、110km/hで高速道路を飛ばしても、レーシングカー然とした咆哮に包まれる。助手席との会話も、7000rpmまで引っ張ればすべて忘れてしまう。

フェラーリ328 GTS(1985〜1989年/英国仕様)
フェラーリ328 GTS(1985〜1989年/英国仕様)

シフトアップすると、さらに幸せな体験が待っている。4速までのギアは適度にクロスしている。運転免許にも危険は及びにくい。

フロントの16インチ7.0Jホイールのおかげで、オフセットしたペダルボックス自体の幅も狭められているが、タイトなドライビングシューズを履く必要はない。シフトダウン時のヒール&トウは難しくない。

今回お借りした328 GTSには、1988年のアップデート時に獲得したABSが備わるが、ブレーキペダルの感触は損なわれていない。微妙な力加減へしっかり反応してくれる。よく効くエアコンと同時に、お墓で眠るエンツォを驚かせた技術かもしれない。

ステアリングにパワーアシストはない。ロックトゥロック3.1回転のレシオで、徐行以上のスピードが出ていれば、適切な重み付けで回せる。操舵時のフィーリングは3台でベスト。ロータス・エスプリ・ターボがそれに迫る。

お尻や背中へ鮮明なフィードバックが伝わる。湿ったアスファルトの上で、ニュートラルなシャシーバランスを堪能できる。壮観な渓谷を縫うように続くルートで、観光客からの視線を浴びつつ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アーロン・マッケイ

    Aaron McKay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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