「これからは人だけでなくクルマも守りたい」 英サッチャム、新施設で自動車試験開始

公開 : 2023.02.13 21:25

英国の自動車試験団体サッチャム・リサーチは、小さな飛行場に新しい研究センターを開設しました。自動車の安全性だけでなく、ライフサイクルの改善も目指しています。

飛行場を活用した新たな研究センター

自動車試験機関である英国の非営利団体サッチャム・リサーチ(The Motor Insurance Repair Research Centreの通称)は、英ノッティンガムシャーに新設した研究センターでの業務を開始した。

このセンターは、既存の自動車メーカーが使用する約15台の車両プラットフォームに加え、今後数年のうちに新規メーカーが導入する30台近い車両プラットフォームに対応するために設けられた。2021年にサッチャムが購入したガムストン飛行場を拠点としている。

サッチャム・リサーチは英国保険協会が設立した団体で、特に安全性に関する自動車試験でよく知られている。
サッチャム・リサーチは英国保険協会が設立した団体で、特に安全性に関する自動車試験でよく知られている。

ガムストンは引き続き飛行場としても利用されているが(サッチャムは昨年、主要滑走路を改修した)、格納庫や関連建物内には新たに作業場とテスト施設が設置された。

「現在のチームは18人で、新施設にも慣れてきています。リース期間が満了したアッパー・ヘイフォードの旧テストセンターよりもはるかに良いですよ」と、ガムストンのチーフエンジニアであるベン・タウンゼント氏は述べている。

「わたし達はニューベリー本部で行われている作業をさらに拡大し、車両技術の研究と安全性テストにおける卓越したセンターになることを目指します」

安全技術を社会に受け入れてもらうために

40ヘクタールの敷地には新たに120平方メートルの舗装エリアを整備したほか、全長1.6kmの3車線道路があり、自動運転技術のテストなどに利用する。

一般道に通じるゲート1か所から出入りできるため、クローズドの試験環境から実世界の試験環境へと素早く切り替えられるのも利点だ。

2021年にサッチャムが購入し拠点を新設したガムストン飛行場
2021年にサッチャムが購入し拠点を新設したガムストン飛行場

タウンゼント氏は、「ガムストンは非常に柔軟性が高く、ウェスト・ミッドランズのメーカーや大学、研究センターと、北部の日産自動車やそのサプライヤーの間に位置する立地です」と話す。

既存のニューベリー本部ではユーロNCAPの衝突試験、データ分析、車両修理の研究、技能訓練(毎年3500人以上の技術者が通う)を継続する一方で、ガムストンでは自動車メーカーと技術開発者、規制当局、保険会社の間のギャップを埋め、理解を深めることを目的とする。

「サッチャムはこれまで衝突安全性の向上に重点を置いてきましたが、これからは他の分野にも目を向けたいと考えています。例えば、一部の自動車メーカーが新しい運転支援技術を設計・搭載する際に、エンドユーザーのことをしっかり考慮していないことが明らかになりつつあるのです。もしユーザーが操作できなかったり操作に不満を感じたりすれば、技術の使用を止めてしまい、安全性が損なわれてしまいます。新しい技術を社会が受け入れるかどうかが鍵になるのです」

この点に関して、ガムストンは国際的な保証センターとなることを目指し、ユーザーが安心して使用できるよう、よりユーザーフレンドリーな技術を推進している。

「技術開発のスピードは速いので、より多くのテストを迅速に行う必要があります。保険会社や規制当局が理解できないからといって、技術を抑制してしまうようなことがあってはならないからです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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