クラスベスト独走状態 FL5型 ホンダ・シビック・タイプR(2) 信頼感を抱かせる意思疎通

公開 : 2025.05.29 19:07

大人な魅力を漂わせるボディを得た、6代目シビック・タイプR K20C型は330psに プラットフォームも進化版 どこを見てもタイプRしている車内 意思疎通しやすい操縦性 UK編集部が試乗

トルクステアを抑える新サス 精度が増したMT

FL5型が振られる6代目ホンダシビック・タイプRには、前輪駆動のハッチバックとして、極めて洗練されたパワートレインが載る。フライホイールの軽量化や、ターボと吸排気系の改良などが施され、K20C型の2.0L 4気筒ターボは330psを発揮する。

この大パワーを、2本のタイヤで受け止めることは簡単ではない。フロントサスペンションは、デュアルアクシス・ストラットと呼ばれる構造を採用。ホイールセンターとキングピンの距離を縮め、トルクステアを抑えている。リアはマルチリンク式だ。

ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)
ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)

ボディ剛性が増したことで、サスペンションは一層緻密に仕事をするようになった印象。アダプティブダンパーも採用し、ホットハッチとして技術は熟成を迎えた。

パワーステアリングは電動で、センサーの解像度が上昇。トーションバーの剛性を6割高めることで、応答性と正確性を磨いている。6速MTも、もともとフィーリングはピカイチだったが、さらに精度が増した。これらを、有能なプラットフォームが支えている。

信頼感を抱かせるのが極めてうまい

公道へ出てみると、運転のしやすさに驚く。新しいシビック・タイプRは、ドライバーへ信頼感を抱かせるのが極めてうまいと思う。

筆者が受けた第一印象は、精錬度というべきか、デジタル感が従来より増したというもの。これは、トヨタGT86がGR86へ進化したものと似ている。

ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)
ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)

ステアリングは従来よりスムーズになり、重み付けや反応が研ぎ澄まされ、トルクステアは解消された。手のひらには、トラクションや路面の状態など、ドライバーが知りたい情報がふんだんに伝わる。電動パワーステアリングならではの、磨き込みといえる。

エンジンのサウンドには、スピーカーから合成音が重ねられる。これも、人工感を高めている要素だろう。

歴代のベストと同様に意思疎通しやすい

一方、能力の幅は格段に広がった。特に、コンフォート・モード時の乗り心地は印象的。荒れたアスファルトを通過しても、先代のような硬さは感じられない。ある程度滑らかなら、スポーツや+Rモードでも同様だ。路面への追従性も、従来の比ではない。

それでいて、ステアリングのレスポンス、ドライバーズカーとしての魅力は損なわれていない。熟成を増した体験でありながら、興奮度や没入度は変わらない。

ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)
ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)

フォルクスワーゲン・ゴルフ Rも同様にドライバーを惹き込むものの、限界付近での懐の深さは限定的。アンダーステアが不意に出やすく、操縦性のバランスを完全には掴みにくい。

シビック・タイプRは、フロントタイヤの状況が手に取るように理解できる。ブレーキペダルを蹴飛ばしたり、アクセルペダルを緩めると、リア側も沈む。意思疎通しやすかった、歴代のベスト・ホットハッチと同様に。ブレーキも頼もしい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 執筆

    ウィル・リメル

    Will Rimell

    役職:ニュース編集者
    ニュース編集者としての主な業務は、AUTOCARのニュースの方向性を決定すること、業界トップへのインタビュー、新車発表会の取材、独占情報の発掘など。人と話したり質問したりするのが大好きで、それが大きなニュースにつながることも多い。これまで運転した中で最高のクルマは、アルピーヌA110。軽快な動きと4気筒とは思えないサウンドが素晴らしい。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

FL5型 ホンダ・シビック・タイプRの前後関係

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