25台のショーファードリブン シトロエンDS 21 マジェスティ 高貴なコーチビルド 後編

公開 : 2023.03.11 07:06

フランスのコーチビルダー、アンリ・シャプロン社を救ったシトロエンDS。25台が作られた高貴なサルーンを、英国編集部がご紹介します。

威風堂々とした威厳が漂うマジェスティ

ミッドナイト・ブルーのボディにハバナ・ベージュのレザー内装でコーディネートされた、シトロエンDS 21 マジェスティ。磨き込まれたアルミ製のホイールカバーが、印象を引き締める。他のDSと同様に、大きなドアガラスにはフレームがない。

極めて状態は良いが、ダニー・ドノヴァン氏が率いる英国のDDクラシック社によって、レストアを終えたばかり。ベルギーのカーコレクターが、長年大切に管理してきた個体だという。

シトロエンDS 21 マジェスティ(1969年/欧州仕様)
シトロエンDS 21 マジェスティ(1969年/欧州仕様)

筆者はDS カブリオレを何台も運転した経験を持つが、コーチビルダーのアンリ・シャプロン社が正式に手掛けたモデルだったのか定かではない。ちょっと気持ちが引き締まる。

実物を目の当たりにすると、威風堂々とした威厳が漂う。フロントフェンダーにはフラッグホルダーが備わらず、ホイールベースは通常のDSと変わらないようだが、フランスの要人が乗っていそうにすら思える。

トランクリッドはスクエアで、荷室は大きい。しかし、リアエンドは第一印象より細身。故シャルル・ド・ゴール大統領が、自信のために長く大きいDS プレジダンジェルを希望したことにもうなずける。

ダイヤモンド・キルト加工された天井

ボンネットを開くと、控えめな直列4気筒エンジンがスペアタイヤの奥に隠れている。ハイドロニューマチックのパイプ類とエアコンのコンプレッサーが、大きく見える。

エンジンルームの後方、バルクヘッドにはアンリ・シャプロン社のシャシープレートが残っている。レストアに一切の抜かりはない。オリジナル状態のまま、シトロエンのエンジンルームをこれ以上美しくすることは不可能だろう。

シトロエンDS 21 マジェスティ(1969年/欧州仕様)
シトロエンDS 21 マジェスティ(1969年/欧州仕様)

スリムなダッシュボードには、イェーガー社製の丸いメーターが6枚と、警告灯が並ぶ。珍しい眺めに、シトロエン・ファンとしては思わず興奮してしまう。

すべてのDS マジェスティが、このように仕立てられたわけではない。巨大なエアコンの送風機が、必ずフロントシートの間に装備されていたわけでもない。

縦にリブの入ったレザーシートは、マジェスティとしての別注品。天井の内張りもレザー張りで、見事なダイヤモンド・キルト加工が施されている。リアシート側の空間は、大柄な大人でも充分なゆとりがある。

レザー張りのドアパネルを観察すると、パワーウインドウのスイッチは見当たらない。ダッシュボードのフェイクウッドは、希望すれば本物に差し替えることが可能だった。この例ではそのままのようだが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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