熟成のスイートスポット ベントレー・コンチネンタルGTC V8 Sへ試乗 走りに意欲的

公開 : 2023.04.02 08:25

スポーティでも素晴らしい外界との隔離性

素晴らしいドライビング体験へ浸るのに、煩わしいことは何もない。ベントレーを運転する敷居は高いと想像されるかもしれないが、実際はそんなこともない。

コンチネンタルの場合、車線維持アシストと衝突被害軽減ブレーキは、デフォルトではオフ。過剰気味に反応するブザーへ平穏が乱されることはない。

ベントレー・コンチネンタルGTC V8 S(英国仕様)
ベントレー・コンチネンタルGTC V8 S(英国仕様)

現在の運転支援システムの完成度は、まだ完璧とはいえない。ラグジュアリー・ブランドのクーペやコンバーチブルへ完璧にフィットさせるには、もう少しの技術向上が必要だろう。

V8 Sは、スポーティ寄りでありながら、騒音や外界との隔離性も素晴らしい。コンバーチブルでも。その二面性には感服してしまう。

コンフォート・モードを選んでいる限り、4.0L V8ツインターボエンジンは極めて静か。8速デュアルクラッチATは、滑らかに仕事を続ける。エアサスペンションはしなやかに衝撃を吸収し、ルーフのないボディを震わせることは殆どない。

高速道路でのクルージング時は、確かにアルミニウムとレザーで仕立てられたクーペのルーフより、多くのノイズが聞こえてくる。だがGTCのソフトトップでも、遮音性は印象的なまでに高い。

秀でたグランドツアラーでドライバーズカー

スポーツ・モードを選ぶと、V8エンジンの存在感が増す。美しいテノールが車内を包む。8速ATとサスペンション、ステアリングは、それぞれシャープさを強める。路面によっては、若干サスペンションの硬さが目立つが。

カスタム・モードで個々の設定を調整すれば、ドライバー好みのコンチネンタルへ仕立てられる。エグゾーストは大胆に、サスペンションは快適に、というチョイスが筆者にとってのベストだ。

ベントレー・コンチネンタルGTC V8 S(英国仕様)
ベントレー・コンチネンタルGTC V8 S(英国仕様)

そうすれば、長距離旅行にピッタリなグランドツアラーになる。かなりスピーディで、レスポンシブで、運転を存分に楽しめる。快適な乗り心地に抱かれながら。

ライバルのように秀抜の操縦性で、動的な訴求力を強くアピールするわけではない。それでも走りはドラマチックだし、インテリアは極めて上質。グランドツアラーとしての実力を保ちつつ、ドライバーズカーとしての能力も高い。

このV8 Sは、コンチネンタルGTとGTSの至高の1択であり続けていると思う。

ベントレー・コンチネンタルGTC V8 S(北米仕様)のスペック

英国価格:21万8355ポンド(約3515万円)
全長:4850mm
全幅:1964mm
全高:1399mm
最高速度:318km/h
0-100km/h加速:4.1秒
燃費:8.0km/L
CO2排出量:284g/km
車両重量:2335kg
パワートレイン:V型8気筒3996ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:550ps/6000rpm
最大トルク:78.3kg-m/2000-4500rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック

記事に関わった人々

  • マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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