ベビー・ランボの過去ベスト ランボルギーニ・ウラカン・テクニカへ試乗 選べぬエゴ・モード

公開 : 2023.05.23 08:25

ウラカンのラストを記念した限定仕様、テクニカ。過去ベストのベビー・ランボルギーニを英国編集部が公道で評価しました。

素晴らしい完成体のV10エンジン

ランボルギーニのV型10気筒エンジンのように素晴らしい完成体を、否定することは難しい。クルマ好きなら、なおさら。大排気量・自然吸気ユニットが生み出すシンフォニックなサウンドは豊潤で、心を強く震わせる。

シートへ身を委ね、加速を試みる。右足の傾きに応じて回転数が上昇し、レッドラインの8500rpmめがけて吸い込まれるように吹け上がる。聴覚的な劇場体験も伴う。高回転域へゆっくり引っ張った際の、高揚感もたまらない。

ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ(英国仕様)
ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ(英国仕様)

こんな素晴らしいユニットが、何年間も作られてきた。だが、そろそろ終りが見えてきたようだ。

先代のガヤルドや、現行のウラカンは、必ずしも非の打ち所がない動的特性を得ていたわけではなかった。それぞれの最初期型には、僅かに至らないところがあった。最新版のウラカン・エボAWDでも、回頭性には人工的な印象が若干伴う。

それでも、ミドシップされるV10ユニットが、それを忘れさせる魅力を撒き散らしてきた。われわれは、この体験を愛してきた。

ウラカン・テクニカで特筆すべき特長は、抜きん出た内燃エンジンへこれまで以上に頼らず、ドライバーを深く惹き込むこと。しっかり心を奪ってくれる。

ガヤルドが2003年にデビューして以来、フェラーリポルシェといったライバルに、最も臆することなく伍せるベビー・ランボルギーニへ進化している。2023年の後半には、V8エンジンのハイブリッド・ミドシップ・スーパーカーが姿を表す予定だ。

エボRWDとSTOのいいとこ取り

ウラカンの最後を飾る限定仕様、テクニカの英国価格は20万3700ポンド(約3279万円)から。上質で流暢に公道を駆けるウラカン・エボRWDと、サーキットへ軸足をおき、最適な条件下で秀抜な能力を発揮するウラカン STOとの、いいとこ取りといえる。

STOの超が付くほどの高精度さと、エボRWDの従順で滑沢な特長が融合すれば、最高のランボルギーニへ仕上がることは想像に難くない。2022年にスペインのリカルド・トルモ・サーキットで初試乗した時は、まさにそれを実感した。平滑な路面ではあったが。

ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ(英国仕様)
ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ(英国仕様)

ひるがえって、今回は傷んだ英国の一般道。条件はより厳しい。

少なくとも、スペックは2023年に見ても壮観だ。乾燥重量は1379kgで、エボRWDより10kg軽量。STOの1339kgほど軽くはないものの、後輪操舵システムを備え、姿勢制御には磨きがかけられ、シャープな回頭性を実現させている。正確性はいわずもがな。

ステアリングホイールには繊細な感触が伴い、コミュニケーション力も見事。コーナーの手前から徐々に負荷を高め、挙動に自信を抱ければ、出口の手前でテールスライドに持ち込むことも可能だ。ESCは、介入が弱いスポーツ・モードにすればいい。

フェラーリ296 GTBの領域にまでは届いてない。それでも、ウラカン・テクニカはテクニカルなルートで洗練された動的能力を存分に発揮できる。ドライバーの歓喜の叫びは、640psを発揮するV10エンジンのサウンドに飲み込まれてしまう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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