寄り道も気兼ねない余裕 フォルクスワーゲンID.4 GTX 長期テスト(8) 愛犬を緊急搬送

公開 : 2023.05.21 09:45

日本でも販売が始まったVWのEV、ID.シリーズ。クロスオーバー「4」の実力を、英国編集部が長期テストで確認します。

積算1万5204km 寒い朝に短くなる航続距離

先日、酷く冷え込んだ日があった。フォルクスワーゲンID.4 GTXに搭載されている外気温計は、マイナス4度を指していた。つまり、バッテリーEV(BEV)の航続距離が短くなることを意味している。長期テストとして、確かめるべき条件でもある。

AUTOCARの姉妹メディアでは、過去にBEVを10車種集めて冬季テストを実施している。同じ条件のもと112km/hと128km/hの定速で走らせたところ、航続距離が10%から20%ほど夏期より短くなるという結果が出ている。

フォルクスワーゲンID.4 GTX マックス(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.4 GTX マックス(英国仕様)

そのテストには、フォルクスワーゲンID.4は含まれていなかった。しかし、プラットフォームやコンポーネントを共有する兄弟モデル、アウディQ4 eトロン 50スポーツバックが挑んでいた。

1度の充電で走行できた距離は323kmで、電費は4.1km/kWh。メーカーの公称値より、30%ほど良くない数字を残している。

翌朝、筆者は念のため毛糸の帽子をかぶり、厚手のコートを着てID.4に乗り込んだ。フル充電のID.4 GTXのシステムをオンにすると、359kmという航続距離が表示された。メーカーが主張するカタログ値は495kmだから、かなり短い。

とはいえ、長期テストを開始してからこれまでの平均の航続距離は、410km。これと比べれば、驚くほどの減少とまではいえないだろう。1割ほど短くなったに過ぎず、ロンドンまでの長距離通勤をしている筆者にも充分な長さといえる。

途中の寄り道も気兼ねない余裕

出発前、充電ケーブルを繋いだ状態でヒーターをオンにし、予め車内を暖めておけるのはとても便利だ。ID.4 GTXへ乗り込んだ時には24度が保たれており、以前の長期テストで乗っていた、レクサスUX 300eより快適に通勤をこなすことができた。

あのUX 300eは航続距離が短かった。離れたオフィスまで駆動用バッテリーの充電量を保つため、冬場にはヒーターをオフにして我慢しながら走っていたことを思い出す。暖かい日が早く来ないかと、待ち望んだものだ。

フォルクスワーゲンID.4 GTX マックス(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.4 GTX マックス(英国仕様)

そんなレクサスも、航続距離を450kmへ大幅に伸ばした改良版を、先日発表している。こちらなら、そんな寒い思いをせずに済んだだろう。

ID.4 GTXの場合、一度の充電で自宅まで不安なく辿り着けるため、快適な車内温度を保
つことも気にならない。その余裕から、途中の寄り道もふらっと気兼ねなくできる。

フォルクスワーゲンは、長距離を安楽に走れるグランドツアラーのような特性を、GTXへ与えようと考えている。今のところ、BEVは内燃エンジンで走るモデルと比べて、ノンストップで到達できる距離は短いけれど。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジャック・ウォリック

    Jack Warrick

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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