ホンダやレクサスも参入 なぜEVで「疑似変速」が採用されるのか(後編) サーキットでの速さに関係も?
公開 : 2026.06.11 17:45
ヒョンデが先駆けて導入した疑似的な変速機構は、高性能EVにおいて注目の高いレンドとなっています。なぜフェイクのトランスミッションを取り入れるのか。ヒョンデの開発者インタビューや他社の動向を紹介します。
疑似変速を使った方が速く走れる?
疑似変速のセッティングは、常にガソリン車の感覚に根ざしたものになるのだろうか? 筆者の問いに対し、アイヒラー氏は次のように答えた。
「お客様はそれを期待していると思います。もし電気モーターの真の限界である2万rpm以上まで回したとしても、意味があるでしょうか? 誰も受けきれないでしょうから、わたし達は内燃機関で馴染みのある8000回転に制限しています」

電気モーターの回転数はシミュレートされたギアによって大幅に抑えられているため、サーキットでのパフォーマンスには顕著な遅れが生じることは十分に考えられる。
「それは個人のドライビングスタイルによるでしょう」とアイヒラー氏は言う。
「理論上は数秒遅くなるでしょうが、(元世界ツーリングカー選手権チャンピオンの)ガブリエル・タルキーニがイタリアのサーキットで開催された当社のメディアイベントに参加した際、彼はN eシフトを使った方が、使わない時よりも速いとわたしに話してくれました。理由は単純です。コーナーから加速する際、過度にオーバーステアにならないよう調整する必要がありますが、適切なギアを選択するだけでクルマがそれに対応できると分かっているため、コーナー出口でフルスロットルにできるのです」
懐疑的なメーカー、積極的なメーカー
しかし、ヒョンデ以外のメーカーの疑似変速に対する反応はまちまちだ。ポルシェは支持を示しているが、ランボルギーニは反対のようだ。ポールスターの製品特性責任者であるクリスチャン・サムソン氏も、現時点ではこのアイデアに反対している。
サムソン氏は筆者の取材に対し、「ヒョンデのやり方は面白いですが、ポールスターが同じことをやるとは想像できません。思わず笑みがこぼれますし、わたし達も時折検討はしていますが、それは伝統やレガシーを呼び起こす装飾品のように感じられます。ポールスターはミニマリストで、より現代的な立場から物事を捉えていますから」と答えた。

とはいえ、BMWがまもなく発表予定の4モーター搭載のEV版『M3』で疑似変速の採用を決めるなど、アイヒラー氏のチームには追い風も吹いている。
アイヒラー氏は、「こうしたニュースを聞くと、わたし達は嬉しくなりますし、もっと仕事を頑張ろうという励みになります。健全な競争も、この業界には欠かせませんよね?」と述べた。
ホンダが追求するギアチェンジの楽しさ
ホンダもまた、このコンセプトに大きな関心を寄せている。新型の高性能EV『スーパーワン』は、350万円以下の価格で7速の仮想ギアとそれに合わせたサウンドトラックを装備している。プロトタイプを初めて試乗した際は大いに期待が持てた。
一方、新型『プレリュード』に搭載された「S+シフト」システムは、実際のエンジンから得たギア操作感を擬似的に再現し、クーペの魅力を削ぎかねない実用重視のハイブリッドパワートレインを華やかに演出している。その結果、非常に好感の持てるクルマに仕上がっている。

「S+で非常に魅力的な感覚を実現することが目標でした」と、エンジニアの立石努氏は語る。
プレリュードの最高速度は控えめな188km/hだが、その範囲内で8速のギアを用意しているため、パドル操作で手を忙しく動かすことができる。ただし、純粋なマニュアルモードがないため、気まずい思いをすることはない。
「プレリュードのギアチェンジには、摩擦や時間のロス、機械的な摩耗がありません。スペースの制約もありません。わたし達は単に、ギアチェンジをする楽しさと喜びだけを追求することができました」























