アジアの巨人「ヒョンデ」「BYD」、日本市場の戦いぶりは? ポイントは信頼・価格帯

公開 : 2023.05.27 21:38  更新 : 2023.05.27 22:30

新感覚のEV 「BYDアット3」試乗

「ATTO3(アット3)」は実車を前にすると、サイドビューに波打つような脹らみがあり、光の放ち方が“思った以上の斬新さ”を伝えてきた。

ダッシュボードはジムで鍛える筋肉質を表現した独特のデザイン。そのデザインはコンソールボックスの蓋にも引き継がれ、そこにダンベルをモチーフにしたシフトノブがコンソールに配置される。質感も高く、チープさは微塵も感じさせない。

BYDの「アット3」は、異彩を放つ外観に注目が集まりがちだが、インテリアは外観以上に個性的。
BYDの「アット3」は、異彩を放つ外観に注目が集まりがちだが、インテリアは外観以上に個性的。    前田惠介

走りは強烈な加速感はないものの、スタートから高速域までフラットにトルクを発揮するのでとても走りやすい。

静かだし、その加速力がどこまでもエンドレスでつながっていくようだ。一方でステアリングはやや緩慢な印象で、コーナーでは若干多めにステアリングを切ることを強いられる。

ただ、操舵感は軽めにできており、ボディの見切りの良さも手伝って、駐車を含む市街地での操作は楽に行えそうだ。

搭載されたインフォテイメントシステムは「ゼンリン製地図データ」を採用するなど、ローカライズに余念がない。交通情報も通信によって必要なデータを得られるようになっていた。

ただ、全体に表示される文字が小さめで走行中の視認性は今ひとつ。メーター内の表示もかなり小さく感じた。今後の改良での改善を望みたい。

販売網を急ぐBYD ヒョンデは新車が鍵

では、こうした中韓勢の進出で日本車への影響はどの程度あるのだろうか。

正直言えば、高価格帯の車両で販売はそう簡単ではないと思う。また、新しいブランドということで、顧客と信頼関係を築くことが欠かせない。

BYDアット3
BYDアット3    前田惠介

そのためにディーラー網の整備は重要と思われるが、そこの部分でヒョンデとBYDは対応が分かれた。

「ヒョンデ」は販売の基本を通販としたのに対し、「BYD」は2025年末までに正規ディーラー100店舗を全国に設置する計画を発表した。

これはすでに結果としても表れ始めている。

BYDは2023年1月31日に発売されたアット3の販売実績が4月までのわずか3か月で305台を販売したのに対し、ヒョンデは昨年からの実績でアイオニック5ネッソ合わせて162台にとどまった。

ヒョンデはこれを踏まえてテコ入れ策を促しているが、ポイントはより価格の安い新型EV「コナ・エレクトリック」の販売になるだろう。

また、新車登録から3年に渡り、法定点検・車検の基本料金とバッテリークーラント交換を同社が負担。さらに外観ダメージの無償修理(1年に1件・最大10万円分まで)を、新車に標準で付帯するという「Hyundai Assurance Program」を打ち出した。

BYDも夏までには低価格帯の「ドルフィン」を発売する計画で、それらが実現すると日本でも300万円前後のEVが手に入るようになる。

この価格帯はヒットを記録した日本の軽EVと同等だ。補助金などを考慮すると低価格でEVが手に入れられる日も近い。日本メーカーの対応が急がれるのは間違いない。

記事に関わった人々

  • 撮影

    前田惠介

    Keisuke Maeda

    1962年生まれ。はじめて買ったクルマは、ジムニーSJ30F。自動車メーカーのカタログを撮影する会社に5年間勤務。スタジオ撮影のノウハウを会得後独立。自動車関連の撮影のほか、現在、湘南で地元密着型の写真館を営業中。今の愛車はスズキ・ジムニー(JB23)

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