ディフェンダーの精神を継ぐBEV マンローMk1へ同乗 ラダーフレームに平面ボディ 前編

公開 : 2023.06.12 08:25

初代ディフェンダーの精神を受け継ぐモデルとして、開発が進む電動オフローダーのMk1。英編集部が試作車へ同乗する機会を得ました。

ディフェンダーの精神的な後継モデル

クラシカルなランドローバー・ディフェンダーは、牧羊犬のような存在だと思う。広大な大地を舞台に働く人にとって欠かせない存在といえ、英国の田園風景を構成するチャーミングな乗り物でもある。

しかし、活発に走り回るボーダーコリーと同様に、堅牢なディフェンダーも寿命を迎える。世代交代が不可欠なことは事実だ。

マンローMk1 ユーティリティ(英国仕様)
マンローMk1 ユーティリティ(英国仕様)

かといって、新しいディフェンダーは簡単に手を出せる金額ではなくなった。高級ゴルフクラブのコース整備を手掛ける人なら、ディフェンダー 110 75thエディションに9万ポンド(約1449万円)を支払えるかもしれないが、それはひと握りに過ぎない。

新興メーカーが手掛けるオフローダー、イネオス・グレナディアなら、約5万5000ポンド(約885万円)と少しお手頃になる。英国の場合、3万ポンド(約483万円)前後でピックアップトラックのフォード・レンジャーを選ぶこともできる。

しかし、これらのモデルは走行中にCO2を排出する。グレナディアは一番効率的な仕様でも276g/km、ディフェンダー 110は240g/km、シングルキャブのレンジャーでも226g/kmと、その量は少なくない。

この課題を解決するべく、スコットランドのマンロー社が開発を進めているのが、電動オフローダーのMk1だ。同社は、牧場などで活躍してきたディフェンダーの精神的な後継モデルを作ること目的に、現CEOのラス・ピーターソン氏によって設立された。

大きな潜在的市場の要望へ応える

働くクルマに対する現場の需要へ応えることが目的だと、ピーターソンは話す。初代ディフェンダーに似ているスタイリングも、偶然ではないといえるだろう。

「このような車両を利用する現場では、短期間で電動モデルへ切り替わることは難しいと考えられていました。早くても10年は必要だと」

マンローMk1 ユーティリティ(英国仕様)
マンローMk1 ユーティリティ(英国仕様)

「事業を始める段階で、市場調査を兼ねてわたしたちのアイデアを告知すると、大手の電力会社などから連絡をいただいたんです。ピックアップを数多く保有するような大企業です。古いディフェンダーを、今でも使っている事業者もありました」

「そこから、大きな潜在的市場があると気が付き、現在の弊社が導かれました。CO2を排出する車両を数多く保有するクライアントを持つことで、安定したビジネスにも繋がります」

「車両を置き換える場合、1度にすべてを交換するわけではありません。400台のディーゼルエンジン車を所有していたとして、年間に置き換わるのは50台前後。何年間も、需要が続く可能性を期待できます」

ピーターソンが続ける。「テスラなど、大手のバッテリーEV(BEV)メーカーを真似るつもりはありません。それでも、今後2万台ほどを世界中で販売したいと考えています」

「弊社は小さなチームです。野心は大きいですが、達成できる目標を掲げています。特殊な車両へ特化し、クライアントの要望へ真剣に耳を傾け、求められているものの理解に努めてきました」

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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