ディフェンダーの精神を継ぐBEV マンローMk1へ同乗 ラダーフレームに平面ボディ 後編

公開 : 2023.06.12 08:26

初代ディフェンダーの精神を受け継ぐモデルとして、開発が進む電動オフローダーのMk1。英編集部が試作車へ同乗する機会を得ました。

本物を維持する哲学で2023年後半から生産

スコットランドの新興メーカー、マンローが開発を進めるMk1。「今のところ、航続距離はお客様の意見を踏まえながら、充分な数字に設定されています。さらに160kmほど伸ばすことも可能ですが、そのぶん車重が増えてしまいます」

「農場などで利用する場合、これ以上長く走れる必要はないでしょう。無駄に大きなトラックを利用するのと、同じことです」。と、同社のチーフデザイナー、ロス・コンプトン氏が説明する。

マンローMk1 ユーティリティ(英国仕様)
マンローMk1 ユーティリティ(英国仕様)

創業者のラス・ピーターソンが掲げる、「本物を維持する」という哲学のもと、2023年後半からMk1の生産が限定的にスタートする。生産ラインはまだ準備段階にあり、実際にMk1の走行距離が増えていくなかで、問題が発生する可能性を彼は認める。

今後1年間ほどは、ファウンダーズ・エディションを月産50台提供する計画を掲げている。ソフトウエアでいうところのベータテスト、量産前の最終プロトタイプ的な内容で、現場からのフィードバックを集めていくそうだ。

生産拠点は、グレートブリテン島の北に位置するグラスゴー。この地域で量産車が作られるのは、1981年に撤退したプジョー・タルボ以来になる。北部の町に新たな産業を提供することも、ピーターソンが自負することの1つ。

「サプライヤーを訪れ、新しい部品をさらに何個欲しいと伝えると、新たに労働力を確保しなくては、と考えが広がるわけです。地域経済に、直接的なインパクトを与えることができます」

有能なオフローダーであることは間違いない

マンローMk1の実力が証明されれば、世界市場も視野に入ってくる。「(東カリブ海の)セントルシアからも問い合わせを頂いており、市場の機は熟していると考えています。混乱を避けるため、まずは大手との企業間取引に集中するつもりです」

最終プロトタイプのMk1で、グラスゴー郊外の過酷なオフロードを走る。有能なオフローダーであることは間違いないだろう。

マンローMk1 ユーティリティ(英国仕様)
マンローMk1 ユーティリティ(英国仕様)

駆動用モーターの即時的なトルクにより、きつい丘をゆっくり滑らかに登っていく。古いディーゼルエンジンのディフェンダーなら、盛大にノイズを放つような場面だ。

下りの急斜面では、回生ブレーキがヒルディセント・コントロール機能も兼ねながら、速度を抑制。安定感は、高級なオフローダーにもまったく劣らない。深い水たまりやぬかるんだ路面でも、驚くほどのトラクションが保たれていた。

初代ディフェンダーなら身体がシートから跳ねるようなワダチを越えても、Mk1の車内は快適。しっかりタイヤが路面を掴み続ける。駆動用バッテリーは、強固な金属で完全にガードされているため、岩場や河川でも心配は不要だという。

ただし、今回は公道を走ることが許されなかった。フォード・レンジャーなどのように、洗練された現代の商用車と同じ水準の完成度を得ることは、簡単な作業ではなさそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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