旧来的な「らしさ」を嗜む ポルシェ911(993型)  英国版中古車ガイド 最後の空冷911

公開 : 2023.06.15 08:25

人気が高止まりする最後の空冷911、993型。生産終了から25年が経過した傑作スポーツを、英国編集部が振り返ります。

旧来的なポルシェらしさを嗜む

25年前、993型のポルシェ911がクラシックとして価値を高めるだろうと、予想したクルマ好きは少なくなかった。結果的に、最後の空冷911として歴史に刻まれていることは、ご存知の通りだ。

純粋さを重んじるカーマニアにとって、空冷911の終焉は、傑作スポーツカーの系譜が絶たれることを意味していた。1998年に後を継いだ996型は水冷エンジンを獲得し、ぐっとモダンさを強めていた。

ポルシェ911 カレラ(993型/1993〜1998年/英国仕様)
ポルシェ911 カレラ(993型/1993〜1998年/英国仕様)

実際、旧来的なポルシェらしさという点で、993型は非常に魅力的な存在だと思う。水平対向6気筒エンジンはクラシカルなサウンドを放ち、ドライバーの心を刺激してくれる。カブリオレなら一層直接的に楽しめる。

そんなベーシックな後輪駆動の993型カレラには、3.6Lのフラット6が載っていた。英国仕様の最高出力は、1993年に発売された前期型が271psで、1996年から285psへ強化されている。

パワフルなカレラSが登場したのは1997年。車高が落ちるサスペンションと、ターボと同じワイドなボディが与えられていた。

安定した四輪駆動を求めるドライバーのために、カレラ4も当初から選べた。1996年にはカレラ4Sが追加され、後輪駆動の「S」と同様に、スポーティなサスペンションとワイドボディで差別化されている。

1995年に登場したのがカレラRS。90kg近い軽量化が施され、最高出力は300psに届いていた。同時期には、ツインターボで400psを得たターボと、450psのターボSも加わっている。

現代の911と比較しても個性が強く濃密

993型の頂点を飾ったのが、ツーリングカー・レースのGT2クラス参戦要件を満たすべく作られた、公道用のGT2。0-97km/h加速を3.9秒でこなし、四輪駆動のモンスター、ポルシェ959へ0.3秒まで接近している。製造数は57台で、13台が右ハンドルだった。

GT2が特別なクラシック・ポルシェであることは間違いないが、それ以外の993型でも人気は堅調。リアアクスルが受け止めるフラット6の重さを常に意識する、従来的な911のドライビング体験を堪能できる。

ポルシェ911 カレラ(993型/1993〜1998年/英国仕様)
ポルシェ911 カレラ(993型/1993〜1998年/英国仕様)

コーナリング中にアクセルペダルを不用意に緩めると、慣性でリアタイヤが前へ流れる場合もある。しかしロードホールディング性は非常に高く、四輪駆動が必須とまではいえない。ブレーキも強力だ。

996型が獲得したステアリングの感触の豊かさや、フロントノーズの正確性までは備わらないものの、現代的な911と比較しても個性は強く味わいが濃密。身のこなしもシャープとはいえないかもしれないが、その必要性を筆者は感じない。

特徴的なサウンドを放つ自然吸気のフラット6と、感触の好ましい6速マニュアルが組み合わされ、多くのドライバーが993型へ魅了されてきた。コンパクトなボディサイズと優れた視認性で、扱いやすいことも美点の1つ。インテリアもシンプルで居心地が良い。

全般的に、993型はまだ比較的入手しやすい価格帯にある。今後はさらなる価値上昇も予想され、関心をお持ちなら早めの一手が効果的といえるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    オリバー・ヤング

    Oliver Young 

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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