やっぱりMTは最高 BMW M2 ホンダ・シビック・タイプR マツダ・ロードスター スポーツカーの大切なパートナー 後編

公開 : 2023.07.15 09:46

英国のMモデルでは唯一のMTとなる、M2。2台の和製モデルとともに、マニュアル・スポーツの魅力を英編集部が再確認しました。

指先でコクコクとテンポ良くギアを選べる

3台のシフトフィールを比較していこう。G87型BMW M2の6速MTは、このブランドらしい印象を与える。シフトレバーの動きにはバネのような弾性が伴い、適度な重み付けがあり、ストロークが長い。

ギアを動かすリンケージは、高剛性な様子。エンジンの回転数を伸ばしつつ、次のギアを迅速に選べる。僅かなノイズを放ち、たるんだ印象はまったくない。

レッドのマツダMX-5(ロードスター) 2.0 エクスクルーシブラインと、ブラックのBMW M2 クーペ、イエローのホンダ・シビック・タイプR リミテッド・エディション
レッドのマツダMX-5(ロードスター) 2.0 エクスクルーシブラインと、ブラックのBMW M2 クーペ、イエローのホンダシビック・タイプR リミテッド・エディション

クラッチペダルを2回踏み、少しの力を込めて左腕を動かし、リズミカルな操作に没頭できる。筆者が慣れ親しんできた、これまでのBMWのMTと変わらない。

FK8型ホンダ・シビック・タイプRの6速MTは、バネが効いたような手応えは少ない一方、メカニカルなカッシリ感がある。登場は2017年で、更に先代のFK2型に搭載されていた2.0L 4気筒ターボエンジンとトランスミッションを、改良して登用している。

フライホイールは軽量化され、ファイナルギアはショート化。2020年に追加された、英国仕様のタイプR GTとリミテッド・エディションでは、シフトフィールの向上を目的に、90gのカウンターウエイト付きシフトノブを獲得している。

今回ご登場願ったイエローのシビック・タイプRは、リミテッド・エディション。既に3万km以上を走っており、真新しいM2やロードスターとは異なる状態にあった。それでも、MTは最高だと思わせてくれた。

シフトレバーのストロークは、M2より短い。弾性が少なく軽く倒せる。指先でコクコクとテンポ良くギアを選びたいなら、シビック・タイプRの6速MTは好適だろう。

走行中に生き物のように震えるシフトレバー

レバーをスロットから抜き、Hゲートを通過させ、ワンテンポおいて次のスロットへ導く。僅かにずれるような感触も伴うが、不満なく滑らか。迅速な変速を求めても、引っかかったり弾かれることはない。ペダルを踏むタイミングに、囚われる必要もない。

マツダMX-5(ロードスター)の6速MTは、シビック・タイプRより更にストロークが短く、引き金を引くような鋭さがある。小ぶりなボディサイズとバランスが取れている。

マツダMX-5(ロードスター) 2.0 エクスクルーシブライン(英国仕様)
マツダMX-5(ロードスター) 2.0 エクスクルーシブライン(英国仕様)

大きく膨らんだトランスミッション・トンネル頂部の、理想的な場所に配されたシフトレバーは、走行中には生き物のように震える。段差を超えると垂直方向に揺れ、エンジンの回転数が高まるに連れ、小刻みな振動が増えていく。

それが、クルマとの一体感を増している。左腕を通じて、ドライバーとパワートレインが繋がっている印象を強める。

冷間時には、腕全体でシフトレバーを動かす必要があるほど重い。しかしフルードが温まれば、軽く滑らかに動き出す。シフトゲートを通過する際の、ワンテンポ取られるような手応えもM2やシビック・タイプRと比べて小さく、独特の質感がある。

流れるように、シフトレバーが動くわけではない。だが、今のスロットから次のスロットへ入れる勢いが、次のギアを自然に導くような印象がある。

絶妙なカウンターウエイトが仕込まれているからかもしれない。デュアルクラッチATのように、次のギアが予め準備を整えているようにも感じる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

やっぱりMTは最高 BMW M2 ホンダ・シビック・タイプR マツダ・ロードスター スポーツカーの大切なパートナーの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事