アイデアは間違いなく魅力的 ロータス・エミーラ I4へ試乗 AMG 4気筒ターボとの調和 前編

公開 : 2023.08.13 08:25

8速ATはシフトパドル付き 最高出力は365ps

ドアを開いてシートへ腰掛けると、小さな違いへ気付く。ステアリングホイールには、メルセデス・ベンツ由来の8速デュアルクラッチATを操るための、アルミ製シフトパドルが追加されている。

パドルのタッチはいまひとつながら、車内の雰囲気を引き締めている。インテリアは、ブラック基調でプラスティックが目立つアルピーヌA110より上質で、ポルシェ718ケイマンにはない英国車らしい暖かみが漂う。

ロータス・エミーラ l4 ファーストエディション(英国仕様)
ロータスエミーラ l4 ファーストエディション(英国仕様)

少し残念なのがシート。サイドサポートが充分ではなく、ヘッドレストが前方へ突き出ている。それ以外の印象は、とても良いのだが。

大きなブレーキペダルを踏み、スタートボタンを押すと、AMGの心臓を宿したロータスが目覚める。本物のメタルとレザーで形作られたシフトノブをドライブに入れる。サウンドは控えめで、反応は従順だ。

アクセルペダルを深く傾けると、後方から唸り声が小さく聞こえてくる。1.0L当たり200馬力を超える高出力型ユニットだという実感は、音響からは得にくい。

同じエンジンをフロントに積むメルセデスAMG A 45 Sでは、422ps/6750rpmの最高出力を発揮するが、エミーラでは365ps/6600rpmへ調整を受けている。今後、パワフルな仕様は想定できるが、今のところ405psのV6エンジン版と距離が置かれている。

英国価格の差は小さい。ほぼフル装備状態のエミーラ l4 ファーストエディションは、8万1495ポンド(約1475万円)。同等の内容を備えるV6エンジン版より、4500ポンド(約81万円)安いだけ。個性の違いで選ぶことになるだろう。

吸排気系は独自設計 サブフレームも専用品

動力性能でも、大きな違いはない。0-100km/h加速は、6速MTの6気筒で4.3秒だが、8速ATの4気筒では4.4秒がうたわれる。タイヤサイズも変わらず、APレーシング社製のブレーキも同じ。

車重は4気筒の方が軽い。といっても、11kgの差に留まる。長距離ツーリングへ登用する機会が多いなら、8速ATのギア比が有用だと思う。

ロータス・エミーラ l4 ファーストエディション(英国仕様)
ロータス・エミーラ l4 ファーストエディション(英国仕様)

メルセデスAMGとロータスという珍しい組み合わせは、エンジンの吹け上がりの鋭さと相まって、訴求力がより高いと感じる人もいらっしゃるはず。3000rpmを超えるとバルブが開き、エグゾーストノートは勇ましさを増す。これを聞くと、更にそう思える。

いうまでもないが、M139型4気筒エンジンは特別。2.0Lの排気量から最大のエネルギーを引き出すため、クローズドデッキと呼ばれる冷却用の空洞が抑えられた強固な構造が、ブロックへ与えられていることからも明らかだ。

A 45 Sと同様に、シャシーへのマウント方向は横向きながら、吸排気系の設計はオリジナル。ロータスのアルミ製シャシーの低い位置へ固定するため、サブフレームも専用品。V6エンジン用のスチール製より12kgも軽い、アルミ製が与えられている。

運転席へ座ると、右側からはバルブトレインが発するメカノイズが、左からはターボチャージャーの悲鳴が聞こえてくる。本来、M139型は情感豊かなユニットとはいえないが、このサウンドがドライバーの気持ちを刺激してくれる。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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