ポルシェ911 詳細データテスト 魅力的なMT ハードな足回り できればよりアナログなシャシーを

公開 : 2023.09.09 20:25  更新 : 2023.10.24 20:14

走り ★★★★★★★★★☆

現行911には650psあるようなものもある中で、カレラTの385psは手に負える数字に思える。止まない雨の中で、理想的な発進加速を得ようとしていてもそう感じる。305幅のリアタイヤは、ウェット路面でもかなりのトラクションを産み、911特有のリア偏重な重量配分を支える。さらに、それを使い切らなくても、1〜2速では速さを感じられる。

ポルシェのウェットモードは、現行911で導入された。トラクションとスタビリティの電子制御を積極的に使うものだが、アクティブ制御の冷却や空力、自動変速機、トルクベクタリングのセッティングも変更される。

ウェットモードは想定どおりの効果を発揮する。7速は高速巡航用と思えば、6速MTと変わらず操作できる。
ウェットモードは想定どおりの効果を発揮する。7速は高速巡航用と思えば、6速MTと変わらず操作できる。    JACK HARRISON

実際のところ、少なくともMTで後輪駆動のカレラTでは、その効果はあまり感じられない。ローンチコントロールのようなトラクションのマネージメントシステムはないし、すべての電子制御がアクティブでも駆動輪はスピンし、発進時にパワーをかけすぎると、水溜りに足を取られる。

それでも、ウェットモードはスタンディングスタートを最適化してくれる。0−97km/hの最速タイムは、ウェットモード選択時で4.8秒、非選択時で4.9秒。理想的なコンディションで記録された4.3秒の公称値にも、大きく引き離されてはいない。

少なくとも高性能ターボエンジンの基準に照らせば、このフラット6はかなり歯切れよく、プログレッシブで、よく回る。そのパワーデリバリーと、ポルシェにありがちなロング気味のギアレシオが、この結果に大きく寄与する。

エンジンのブーストは、ペダルを踏み込んでから立ち上がるのにわずかな間が必要だが、爆発的な力ではなく、扱いやすい推進力が広い回転域で発生し、7000rpmを超えるまでハードに働き続けてくれる。

そのため、最大トルクは45.9kg-mに過ぎないが、インギア加速はかなり早く感じ、その後も引っ張り続ける。4速での80−113km/hは、ウェットコンディションで3.4秒だったが、ドライで計測したシボレーコルベットでも3.1秒だった。しかも、そのまま変速なしで楽に225km/hまで引っ張れる。コルベットは8速DCTの4速で、188km/hまでしか出ない。

このパワートレインには、力強さとフレキシビリティが明らかにある。ハードに働き、レスポンスがよく、よく回り、このクルマに合わないところはまったくない。

これによく合っているのが、ギア比選択も絶妙なMTだ。短く、やや重く、みっちり詰まった手応えのシフトは、すぐに直観的に操作できるようになる。7速あっても、普通に走っている分にはさほど複雑ではない。というのも、7速を使う機会は、ゆったり高速道路をクルーズするときくらいだから。それを除けば、うまくチューニングされた魅力的な6速MTと変わりないわけだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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