ポルシェ911 詳細データテスト 魅力的なMT ハードな足回り できればよりアナログなシャシーを

公開 : 2023.09.09 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

カレラTには、驚くほど妥協のないスポーティなキャラクターがある。カレラとカレラSの間の妥協点だと思っていると、予想できないくらいだ。たとえこのモデルのメカニズム構成に精通していても、おそらく乗り心地もハンドリングもカレラSのオプション装備車くらいに考えるのではないだろうか。

ところが、このクルマ独自の、サスペンションとパワートレインのセッティングやホイールとタイヤとの組み合わせ、そして遮音材の欠如は、一般的な911よりやや硬く乱れやすい乗り心地を生む。複合的な路面では、明らかに粗くうるさい。

911としては低価格だが、カレラTはワイルドで、グリップが効き、ダイレクトなモデルだ。4WSはスタビリティやアジリティを高めるが、全体的なピュアさを損ねてもいる。
911としては低価格だが、カレラTはワイルドで、グリップが効き、ダイレクトなモデルだ。4WSはスタビリティやアジリティを高めるが、全体的なピュアさを損ねてもいる。    JACK HARRISON

そのいっぽうで、グリップ感は強く、より安定して、挙動はわずかながらダイレクトになっている。好ましくないものではない。しかしおそらく、ファンが期待するような、より味わい深く、アナログさの増した、昔ながらの911らしさを感じさせるものでもない。

要するに、これはむしろ目的のはっきりしたスポーツカーで、舗装のいい道路やサーキットでのグリップや、長距離を集中して飛ばすことを目指したクルマだ。サーキットでは、ウェットコンディションであっても、ほんの数世代前のGTモデルなら手に入れるのに苦戦したようなグリップやボディコントロール、コーナリングでのスタビリティを発揮する。

不整路面では、PASMスポーツを装備したほかの992モデルと同じく、ボディコントロールの全体的な器用さに欠けている。波長の大きいバンプでは、サスペンションのトラベルが尽きないかヒヤヒヤし、時にはきつい入力で暴れてしまう。それでも、運転したくなる。安定感やしなやかさが常に期待通りというわけではないにしてもだ。

テスト車は、オプションの4WS搭載車で、高速コーナリングでのスタビリティと、低速時のアジリティが高められているのはたしかだ。だが、これがなければ、もう少しナチュラルで、表情豊かな走りをみせたのではないだろうか。

それでも、この操舵システムがシャシーを根本的に変えたわけではない。レギュラーシリーズの911が、いかにシリアスなスポーツカーたり得るかを示すために、ハードに走らせたくなるクルマであることはそのままだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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