Eタイプとエンジン共有 ジャガーXJ6/XJ12 英国版中古車ガイド 当時世界最高のサルーン(1)

公開 : 2023.09.30 17:45

1970年代に世界最高のサルーンと評されたXJ6 ウィリアム・ライオンズ晩年の功績の1つ 今も有能なスポーツサルーンを英国編集部がご紹介

世界最高のクルマ Eタイプとエンジンを共有

ジャガーを創業したウィリアム・ライオンズ氏は、並外れたビジネスセンスを備えつつ、デザインに対する高い審美眼も備えていた。現場人として経営に携わりながら、美しいスタイリングの創出に携わった。他の自動車メーカーが、羨むような存在といえた。

彼の晩年の功績の1つが、1968年に発売されたXJ6だ。それまでのジャガーMk2やSタイプ、Mk Xといったモデルを大胆に置き換える、フラッグシップ・サルーンだった。

ジャガーXJ12(1972〜1992年/英国仕様)
ジャガーXJ12(1972〜1992年/英国仕様)

その仕上がりは素晴らしく、当時のAUTOCARは価格を2倍にしても良いと評価したほど。世界最高のクルマだとし、「価格帯を抜きにして、動的能力でこれに匹敵するモデルはない」。とまとめている。

このクラスとしては手頃な価格を実現させた理由は、開発費のかかるコンポーネントを共有したため。ライオンズは、XJへ向けて開発された安全性の高いダッシュボード周りを、スポーツカーのEタイプにも与えた。

同時に、Eタイプへ載っていた直列6気筒やV型12気筒のエンジンは、サルーンの動力源としても不満ない能力を発揮した。とはいえ、XJシリーズが既存部品の寄せ集めだったわけではない。多くの設計がまったく新しいものだった。

ボディ構造には、振動と雑音を軽減し衝突時の安全性を高めるという、当時最新の考え方が盛り込まれていた。サスペンションには、加減速時にボディをフラットに保つアンチダイブ設計が施され、トップマウントに堅牢なポリウレタンが採用された。

24年間も生産は継続 改良で洗練性を維持

エンジンとフロントサスペンションはサブフレームに固定され、ブッシュを介してボディシェルと結合された。パワーステアリングには強力なサーボが与えられ、ステアリングラックはラック&ピニオン式を採用。これも、サブフレーム上に固定された。

マニュアル・トランスミッションの変速は滑らか。タイヤは、ジャガーのために新開発されたロープロファイルのダンロップ社製が組まれた。

ジャガーXJ12(1972〜1992年/英国仕様)
ジャガーXJ12(1972〜1992年/英国仕様)

欧州市場を前提に、税金が安くなる小排気量の2.8L 直6エンジンも新たに開発。冷却効率にも注意が払われた。ドアやウインドウの気密性や遮音性に配慮され、ヒーターやデフロスターも強化してあった。

その努力は見事に実り、直列6気筒のXJ6は1969年に英国のカー・オブ・ザ・イヤーを受賞。1972年には、Eタイプ譲りのV型12気筒エンジンを搭載したXJ12もリリース。秀でた静寂性を備えつつ、圧巻の動力性能を披露した。

リアシートが若干狭いという課題は、1972年にロングホイールベース版が登場したことで解決。1975年には、標準ホイールベース版の製造は終了した。

ジャガーは、XJシリーズを24年間も作り続けた。都度改良を加え、洗練性は最後まで高いままだった。1979年には、ピニンファリーナ社がXJシリーズをフェイスリフト。現代的なスポーツサルーンとして仕立て直し、モデルライフの延命に貢献した。

状態の良いXJシリーズのステアリングホイールを握り、郊外の道を流すほど、穏やかで満たされた時間はないかもしれない。非常に静かで快適で、今でも充分に速いスポーツサルーンだといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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