ステーションワゴンも存在 ジャガーXJ-S 21年作られた大猫(2) 特別な暮らしを送れそう?

公開 : 2025.02.09 17:46

マルコム・セイヤーが描いた大猫、XJ-S 特別なライフスタイルを想起 V12エンジンは幻のXJ13由来 不具合や製造品質が乱した所有体験 カブリオレやステーションワゴンも 英編集部が振り返る

ルーフラインを延長したリンクスのワゴン

今回ご登場願った、ホワイトのジャガーXJ-SCは、デイブ・ノリス氏がオーナー。走行距離は11万9000kmと、年式の割には短い。

HE仕様でもあり、タイヤは幅が215へ広がっている。アルミホイールはスターフィッシュ・デザイン。インテリアでは、メーターのフォントとステアリングホイールが違うものの、基本的な造形はクーペと変わらない。しかし、高級感は高い。

ジャガーXJ-SC HE(1983〜1988年/英国仕様)
ジャガーXJ-SC HE(1983〜1988年/英国仕様)    ジョン・ブラッドショー(John Bradshaw)

乗り心地は硬め。車重が90kgほど増え、サスペンションが強化してあるためだろう。一方で、300psの5.3L V12エンジンは明らかにパワフル。特に中域でたくましい。

XJ-SCの登場で影響を受けたのが、英国のコーチビルダー、リンクス社。XJ-S クーペをベースに、コンバーチブルへの改造を請けていたのだ。そこで新たなスタイルとして考案されたのが、ルーフラインを延長したステーションワゴン、イヴェンターだ。

発表は1983年10月のロンドン・モーターショー。骨太なバットレスは大きなサイドウインドウへ置き換えられ、美しく仕上がっていた。リアシートの後ろには、奥行きが190cm近くある荷室が設えられ、会場の話題を集めた。

フラットな荷室の床面は、燃料タンクの位置を変更することで実現。沢山の荷物にも耐えるよう、リア・サスペンションも改良を受けていた。注文には6950ポンドの他にベース車両が必要で、完成までに14週間を要したという。

高域で甘美な響きになる6気筒 足取りは軽快

オパールセント・ゴールドに塗られたリンクス・イベンターのオーナーは、マイケル・ビング氏。1985年式で、9年前に購入したそうだ。リンクス社は合計67台を生産しているが、3.6L直列6気筒エンジンとMTを搭載するのは2台しかない。

スタイリングの印象は人それぞれかもしれないが、筆者の目にはハッとするほど優雅に映る。リアシート側の空間は拡大され、大人でも問題なく座れる。ステアリングホイールはリンクス独自の3スポークだが、それ以外の前席側はXJ-Sのままだ。

リンクス・イベンター 3.6(1983〜2002年/英国仕様)
リンクス・イベンター 3.6(1983〜2002年/英国仕様)    ジョン・ブラッドショー(John Bradshaw)

これに載る直6エンジンは、AJ6型と呼ばれるオールアルミ製で、XJ-S用に新開発され1983年に登場。サウンドは低域では実務的だが、高域では甘美な響きへ転調する。

トランスミッションは、ゲトラグ社製の5速マニュアル。シフトレバーはスムーズに動く。最高出力は228psだが、V12エンジンのXJ-Sと比べても、動力性能は2割程度しか劣らないように感じる。フロントが軽い分、むしろ足取りは軽快だろう。

もう1台、社外で仕立てられたXJ-Sが、リスター・ジャガー。サイモン・スパーレル氏がオーナーで、4000時間に及ぶ入念なレストアを経ており、ミネラル・ブルーのボディがまばゆい。

かつてAUTOCARの姉妹誌で編集長を勤めた、サイモン・テイラー氏はXJ-Sの性能に不満を抱いていた。ある時、リスター・カーズのブライアン・リスター氏と、こんな会話を交わしたという。「XJ-Sを改造して、リスター・ジャガーと呼ぶのはどうだろう?」

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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