プアマンズ・ロールス・ロイス ジャガーXJ6 S1とローバーP5 B(2) 歴代の英国首相の公用車

公開 : 2025.05.10 17:46

デビッド・ベイチュの落ち着いた容姿を持つローバーP5 B 21世紀へ継承された美しいボディラインのジャガーXJ6 大変化の時期にあった1960年代の自動車業界 UK編集部が象徴的サルーンを比較

激動の中にあった1960年代のジャガー

ジャガーXJ6 シリーズ1のサスペンションは、前がセミトレーリング・ウィッシュボーン式にコイルで、後ろがロワーウイッシュボーン式にツインコイルという構成。リア側は、ドライブシャフトがアッパーリンクも兼ねた。

ブレーキは前後ともディスクで、高精度なパワーステアリングも標準装備。開発予算は600万ポンドと巨大ではなかったが、SタイプやMkXなど、ブランド内のサルーンをすべて置換する役目が与えられていた。

ジャガーXJ6 2.8 シリーズ1(1968〜1973年/英国仕様)
ジャガーXJ6 2.8 シリーズ1(1968〜1973年/英国仕様)    トニー・ベイカー(Tony Baker)

その頃のジャガーは、激動の中にあった。1966年にBMC傘下へ併合され、1968年にレイランド・モータースと親会社は合併し、巨大なブリティッシュ・レイランドが誕生。ローバーは、同じ傘下のブランドになっていた。

XJ6 シリーズ1へ寄せられた賛辞に、ジャガー創業者のウィリアム・ライオンズ氏や主任技術者だったボブ・ナイト氏は、胸をなでおろしたはず。英国価格はドイツ製ライバルより30%安く、上級サルーンの水準を引き上げる完成度にあった。

「信じられないほどの価値があります。最高峰の誕生です。XJ6の価格が仮に2倍で、世界最高のクルマだと主張されても、われわれはそれを否定しないでしょう。XJ6は、新たな基準です」。その頃のAUTOCARは、こう伝えている。

歴代の英国首相の公用車になったP5 B

マーティン・ロビンズ氏は、アドミラルティ・ブルーとシルバー・バーチのツートーンに塗られた、P5 B 3.5リッター・クーペを16年間所有している。以前のオーナーは、新車時代から大切に乗っていたようで、走行距離は8万2000kmほどだったという。

この車両は、1972年に開かれた故エリザベス女王の銀婚式式典にも参列している。ロスタイル・ホイールとドライビングライトの追加で、見た目の印象はだいぶ変わるものだ、と感心する。1950年代風の容姿が、上品にアップデートされている。

ローバーP5 B 3.5リッター・クーペ(1967〜1973年/英国仕様)
ローバーP5 B 3.5リッター・クーペ(1967〜1973年/英国仕様)    トニー・ベイカー(Tony Baker)

XJ6 シリーズ1と並ぶと、かなりの好対照といえるが、堂々とした佇まいにある。歴代の英国首相の公用車として、歴史を重ねた風格がある。

後席の居心地は素晴らしい。独立したレザーシートが2脚並び、アームレストで左右が仕切られている。その中には、格納できるカップホルダーとテーブルが設えられている。カーペットは厚手。ヒーターとラジオのボリュームを調整できる、操作パネルもある。

プアマンズ・ロールス・ロイスと呼ばれた過去

運転席側は、時代を超越して愛着が湧く、複数のメーターが並んだクラシカルなダッシュボードが支配的。両端がカーブを描き、ドアの内張りと滑らかに繋がる。見た目が優雅なだけでなく、人間工学にも優れている。

トランスミッショントンネルの上には、ツールボックスが隠れている。ダッシュボードの下段には、小物用のワイドな棚。仕立ては上質で、ゆとりがある。座面が高めの運転姿勢は自然で、前方視界は広い。

ローバーP5 B 3.5リッター・クーペ(1967〜1973年/英国仕様)
ローバーP5 B 3.5リッター・クーペ(1967〜1973年/英国仕様)    トニー・ベイカー(Tony Baker)

P5 Bは、英国でプアマンズ・ロールス・ロイスと呼ばれていた。しかし、内装にプアという言葉は合致しないだろう。

3.5L V8エンジンを始動させると、英国車として聞き慣れたサウンドが小さく響く。ステアリングホイールのリムの内側には、クロームメッキのホーンリングが輝く。

油圧システムの圧力が上昇すると、パワーステアリングが機能し、低速域でも取り回しは容易。3速ATの変速は滑らか。レスポンスの良いアクセルペダルをしっかり踏み込むと、キックダウンを誘える。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    トニー・ベイカー

    Tony Baker

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ジャガーXJ6 S1とローバーP5 Bの前後関係

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