ドライバーズカー選手権2014 / 異分野対決

公開 : 2014.11.07 23:55  更新 : 2017.05.29 19:50

しかし潜在的に悪い所づくしというわけではなく、単に焼き上がり前のクッキーと同じように完成度が低いだけなのだ。もう一度オーブンに戻せば、きっと美味しいものが出来上がるのではないか、という期待が持てるだけでも、4Cの収穫というものだ。今のところ、改善点が多く残っているけれど、とんでもない実力を秘めていることは間違いない。

対するメガーヌ275トロフィーも、問題に思い悩まされているクルマである。取り立てて低く構えているわけではないし、2シーターというわけでもない。ミド・エンジンでもないし、カーボンファイバーのタブを持っているわけではないのだ。それに、長い年月をかけて改良点を突き詰めてきただけに、成熟しきったこのクルマには、もはやあまり伸びしろが残されていないのだ。前輪駆動車であるという潜在的なネガも抱えている。

ほとんどのテスターが、安心してサーキットの感覚を取り戻せるという理由で最初にメガーヌを運転したというのも、どこか納得がいく。マット・ソーンダースいわく ”このクルマほど簡単に速く走らせることができ、ドライバーの自身を高めてくれるクルマはない” とのこと。マーク・ティショーは相変わらず ”毎年良くなっていく世界最良のホットハッチだ” という見方を変えていない。

事実、唯一の前輪駆動車として、われわれがまだ知らなかったメガーヌの魅力を再認識する結果となった。全体的な完成度の高さだけではなく、素晴らしいハンドリングを得るためには、ミド-マウント・エンジンや、ダブルウィッシュボーン・サスペンション、カーボンファイバー製タブなどは必要ないということも証明した。サスペンションの最適なセッティングをご存知ならば、前輪駆動のトーションビーム式リア・アクスルを選べばいいのだ。

このクルマの強みと言えば、並外れたダンピングも忘れてはならない。この最も重要な要素こそ、カッスル・クームを走るうえでドライバーが最も必要とするものだと言ってもいい。テールが雁字搦めに固められていないため、ミドル・コーナーを抜ける最中にプランを変更したとしても、十分に対応できるうえ、だからと言って、トレイル・ブレーキングを行ったとしても急に不安定になることはない。またトルク・ステアは明確に顔を出すが、運転に支障をきたすレベルではない。

マイナス面と言えば、賢いリミテッド-スリップ・ディファレンシャルをそなえていたとしても、トラクションが不足している点だ。コーナーでホイールスピンを緩和してくれるものの、完璧にはスピンを止めてはくれない。またエンジンにはいくばくかのラグがあり、ギアボックスは滑らかではなく、反応も遅い。要するにメガーヌのキャラクターに合っていないのだ。しかしテストの終盤では ”いまだに世界一のFF車だ” と、マット・プライヤーは締めくくっていた。少なくともわれわれの求める文脈はクリアしているため、マットの評価には皆、異論はなかった。

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