アルピーヌA110 詳細データテスト 完成度の高いシャシー モアパワーがほしい もう少し安ければ

公開 : 2023.11.25 20:25  更新 : 2023.12.13 05:44

意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆

すでに軽量さを極めた2シーターの大量生産スポーツカーをさらに軽量化するには、クリエイティブな発想が必要だ。リアシートはもともとないので、ボディやガラス、サスペンションやインテリアなどから重量を削っていくわけだが、その余地も大きくはない。

A110Rは、A110Sより34kg軽いという。実測したところ、全備重量は1100kgを切る。これは2018年に計測したA110より31kg軽い。

空力デザインのカーボンホイールの裏には、A110Sと同じアルミハブとスティールディスクを組み合わせたブレーキが備わる。このホイール、見た目と異なり、ブレーキの冷却性能を高めるという。
空力デザインのカーボンホイールの裏には、A110Sと同じアルミハブとスティールディスクを組み合わせたブレーキが備わる。このホイール、見た目と異なり、ブレーキの冷却性能を高めるという。    JACK HARRISON

テスト車には、カーボンコンポジット素材を用いた2ピースのデュケーヌ製18インチホイールが装着され、バネ下重量を12.5kg削減。サベルトのハードシェルを用いたシートバック固定式カーボンバケットシートは5kg、ガラスパネルに変わるカーボンのエンジンカバーは4kg、カーボンボンネットは2.6kg、シンプルな構造のスポーツエグゾーストは0.7kgの軽量化を実現。6点ハーネスは、巻き上げ式シートベルトより1.5kg軽い。

残り8.9kgは、アイテムの排除による。ルームミラーやリアバルクヘッドのガラスウインドウは、後方視界をふさぐカーボンエンジンフードの採用に伴い取り外された。また、6点ハーネスにより不要になったと判断されたのが、助手席エアバッグだ。

逆に、サスペンションは1.2kg重くなった。これは、競技車両グレードのコイルオーバーストラットによるものだ。手動調整により、車高は10mm変更でき、伸びと縮みの減衰力は20段階の設定が選べる。

公道仕様のセッティングでは、A110Sより10mm低く、スプリングレートは前後とも10%高い。スタビライザーの横剛性は、フロントよりリアが高められている。コイルオーバーはさらに10mmのローダウンが可能で、純正のサーキット仕様セッティングとすることができるが、今回は試さなかった。

リアのダウンフォースは、標準仕様のA110より110kg増している。主にスワンネックのリアウイングによるものだ。フロントは30kg増。いずれも最高速の285km/hでのデータだ。サーキットセッティングにすれば、いうまでもなく空気抵抗は低減できる。

この空気抵抗低減が、ディエップにとってはとくに重要だ。というのも、多くのサーキット志向モデルとは違って、A110Rはレギュラーモデルに対してパワーアップしていないからだ。ルノースポール由来の1.8L直4ターボは、他仕様と同じく300ps/34.7kg-mを発生。7速DCTのギア比は、A110Sと変わらない。

こうした仕様決めのキーになっているのは、A110R開発中にアルピーヌが行ったユーザーに対する調査だ。フランスではエミッションをベースにした悪名高い税制が敷かれており、高出力スポーツカーのオーナーに多大な出費を強いる。それを避けたいという声が大きかったのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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