アルピーヌA110 詳細データテスト 完成度の高いシャシー モアパワーがほしい もう少し安ければ

公開 : 2023.11.25 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

加速するに従って満ちてくるA110Rのグリップ感は、操舵が加わるとより一層わかりやすい。鼻先の向きは、驚くほど軽く、俊敏で、ダイレクトに変わる。そして、サスペンションをしっかり上下動させながら走っていく。

ボディの挙動は、引き締まっていてタイトに抑えられている。ほかのスポーツカーに、公道で同じような動きを見せるものはかなり少ない。ターンインからアペックスを経てコーナーを抜けるまで緩慢さはなく、スピード的なポテンシャルは有り余るほどある。

サーキット志向のクルマとしては、バンピーなB級道路での身のこなしはかなり上等。外から見ると、ホイールアーチに入り込む外気の少なさがわかる。
サーキット志向のクルマとしては、バンピーなB級道路での身のこなしはかなり上等。外から見ると、ホイールアーチに入り込む外気の少なさがわかる。    JACK HARRISON

しかしまた、サーキット志向のクルマに想像するより、手強い路面でも落ち着いて飛ばせる一面も併せ持つ。アルピーヌの手が込んだダンパーは、オンロードでのみごとな平静さをもたらすために、めざましい仕事をする。行動向けのサスペンションセッティングでは、B級道路をすばらしく穏やかにいなす。大きく鋭いインプットや、轍とバンプが絡んだときには、グリップやリバウンドが衰えるので、ステアリング越しのインフォメーションは豊富だが、しゃかりきに抑え込もうと苦闘する必要はない。

そうしたバンプでの穏やかさは、このクルマを走らせる上で大きな自信を与えてくれるが、限界域で見られるシャシーバランスも、A110に予想するものとまったく違う。ただし、ジャイアントキリングなラップタイムを出そうという野心的なクルマにそぐわないものではない。

標準仕様よりリアスタビライザーのレートを高め、ダウンフォースの中心がリアよりになったことで、ハンドリングはこれまでのアルピーヌよりスタビリティ志向になっている。

ガッチリ安定したリアアクスルは、すべりやすいコンディションでも従順さを増すが、ほぼどんなときでもストイックにコントロールされている。そのためコーナリング時のグリップレベルは、しばしば重みのある手応えのステアリングを通して感じられる前輪の横グリップ限界のフィーリングによって補われる。

また、アペックスへ大胆なスピードで飛び込んでも、何が起きるか心配することはない。標準仕様のA110なら、穏やかなダイブやロール、振動やスリップが入り混じるバレエのようなハンドリングを楽しめるのが個性になっているところだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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