アルピーヌA110 詳細データテスト 完成度の高いシャシー モアパワーがほしい もう少し安ければ

公開 : 2023.11.25 20:25  更新 : 2023.12.13 05:44

当代きっての軽量スポーツカーを磨き上げたA110Rは、みごとなシャシーの完成度に唸らされる一台です。しかし、ノーマルのままのエンジンやあまりに安定した走りに物足りなさも。もう少し野性味と遊び心がほしくなります。

はじめに

今回のアルピーヌA110Rは、アルピーヌの大きな飛躍を象徴するとともに、A110というスポーツカーにとって意義深い発展でもある。それは、多くのひとびとが思っている以上だ。

もちろん、スポーツカー専用モデルのサーキット走行仕様で成功しているライバルもいるが、A110は単なるミドシップ2シーターではない。母国たるフランスでは、特別仕様で大きくパワフルなエンジンを積むなど、安易な性能向上を図ることに厳しいペナルティが課される。また、そういうやり方は、歴史的に見ても、このブランドのクルマづくりのアプローチにそぐわない。

テスト車:アルピーヌA110R
テスト車:アルピーヌA110R    JACK HARRISON

創業者であるジャン・レデレがラリーで修めた成功に端を発し、1960年代のアルピーヌはコンパクトスポーツカーを好んで生み出した。控えめなサイズで軽く、特有のサスペンションチューンを施したそれは、公道を走るのに適していた。そこに、ビッグパワーという要素はなかった。

それから50年を経て、アルピーヌブランドが再興されたとき、同じく公道向けのスポーツカーを生み出した。新生A110はナローで、ホイールサイズは控えめで、楽にコントロールできるミドエンジンのシャシーと穏やかなレートのサスペンションを併せ持ち、パフォーマンスカーの基準を刷新した。

しかし今、絶賛されたベースモデルはそのままに、ディエップではA110の可能性を探りはじめた。2019年にはマイルドなチューンを施したA110Sを送り出し、それに続いて登場したのがよりハードコアなA110Rだ。

A110がライフサイクルの後半に入る中で、バリエーションは最大限まで拡大した。そうして、このクルマをもっともシャープな部類の運動性を持つものへと過激に進化させる機会を得たのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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