【スーパーチャージャドV8】ジャガーFタイプ P575 AWD R 575ps 限りある余命

公開 : 2020.02.17 10:20

駆動系も足回りも大幅に手直し

前置きが長くなってしまった。今回、AUTOCARが快晴のポルトガルで試乗を許されたFタイプもV8エンジンを搭載しているが、別仕立てのものだった。トップグレードとなる、4輪駆動のP575と呼ばれるFタイプ Rだ。

英国ではクーペが9万7280ポンド(1391万円)、コンバーチブルが10万2370ポンド(1463万円)という価格が付いている。決して安い金額ではないが、ジャガーが開発資金をつぎ込んで完成させたことは伝わってくる。

ジャガーFタイプ P575 AWD R(欧州仕様)
ジャガーFタイプ P575 AWD R(欧州仕様)

ベースとなるのは、古いFタイプ SVRと同じV8エンジンで、575psと71.2kg-mを獲得。電動パワーステアリングの設定にも大幅に手を加えている。8速ATはZF社製となり、ジャガーXE SV プロジェクト8の開発で得た知見を導入して、改良が施されている。

サスペンションも大幅に見直された。タイヤはフロントが265/35、リアが305/30という幅広のピレリPゼロを履く。専用開発されたもので、幅は従来から10mm広がっている。

これらが融合し、爆発的な直線加速と、スポーツカーらしい操縦性と安定性を獲得した。一方で、長距離移動を安楽にこなすグランドツアラー的要素は少し薄まった。

乗り心地は非常に優れている。価格的に近似する、ポルシェ911 992型カレラ4Sよりも柔軟で当たりが柔らかい。

コーナーをいくつか曲がると、ポルシェが備えているコーナリングバランスと素直な操縦性には及んでいないことがわかる。しかし、ドライバーを陶酔させるFタイプの走りに、心は奪われるだろう。

5.0Lスーパーチャージャーの腕力と個性

ステアリングホイールの重み付けも素晴らしく、操舵感も直感的。切り始めの反応が鋭くなり、ノーズの機敏な応答につなげている。

アダプティブダンパーの設定を引き締めても、車重は1743kgもあり、コーナーリング時にはある程度のボディロールを許す。ロールの発生は自然で、完全に制御下におかれた印象がある。

ジャガーFタイプ P575 AWD R(欧州仕様)
ジャガーFタイプ P575 AWD R(欧州仕様)

4輪駆動の生む強大なトラクションがそこへ加わり、ワインディングを激しく攻め立ても、ドライバーとFタイプとの信頼関係は揺るがない。もちろん、カーブの途中でパワーを掛けすぎればリアタイヤはむずがり、振動が出ることもある。手加減は必要だ。

5.0LスーパーチャージドV8エンジンが生み出す、腕力と個性は凄まじい。このFタイプの走りを決定づけるユニットだといえる。もちろん、乗り心地や操縦性に良くない影を落とすものではない。

スロットルレスポンスは即時的だが、本領が発揮されるのは3000rpmを過ぎてから。線形的に伸びる加速と、爆発するようなサウンドトラックが重なる。その躍動感は、0-100km/h加速3.7秒に相応しい。

フルスロットルでシフトアップすれば、背中を強く蹴り上げるような振動が伝わる。ATのギア比は、一般道を素早く走らせる前提で、決められているように感じる。

2速で目一杯引っ張れば、104km/hに届く。一方でリラックスして変速を重ねれば、悪くないエネルギー効率も得られる。

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