【勝利のカギはバランスにあり?】スーパーミニEV対決 プジョーe-208 vs ミニ・エレクトリック vs ルノー・ゾエ 後編

公開 : 2020.05.30 07:20

航続距離が重要 高速での長距離移動は苦手

一方で、プジョールノーの2台はその航続可能距離で大きくミニを凌ぐ。

シティコミューターとして使われることが多いコンパクトモデルの場合、航続可能距離が持つ重要性は大型モデルよりも高く、頻繁に充電が必要になるということは、いまだ数の少ない街中に設置された充電ステーションを他のEVと争わなければならないことを意味しているのだ。

3台のなかではミニの航続可能距離がもっとも短く、実際の路上ではわずか160km程度に留まる。
3台のなかではミニの航続可能距離がもっとも短く、実際の路上ではわずか160km程度に留まる。

それでも、実際には3台すべてでその航続可能距離はWLTP値から65km程割り引いて考える必要があるだろう。

ミニの場合、その実際の航続可能距離は160kmをやや越える程度であり、他の2台がやすやすと270km以上を充電無しに走破出来ることを考えれば、大きく見劣りすると言わざるを得ない。

さらに、ミニではエアコンやヘッドライトをオンにしたり、スポーツモードを選択すると、ゾエとe-208以上のペースで航続可能距離が減少する。

2台のフランス車であればこうした影響はより少なく、自信を持って表示された航続可能距離を信じて、遠くまで行くことが出来るに違いない。

とは言え、3台いずれも決して高速での長距離移動向きのモデルなどではなく、そうしたシチュエーションでは実際の表示以上のペースで航続可能距離の減少に見舞われることになる。

まったく異なる3台 航続距離だけでは不十分

では、今回の結論はどうなるのだろう?

まったくタイプの異なるこの3台のコンパクトEVは、それぞれがやや異なるタイプのドライバーに向けたモデルとなっているのだから、答えを出すのは簡単ではない。

ゾエでは直流急速充電器は1000ポンド(13万3000円)のオプションだ。
ゾエでは直流急速充電器は1000ポンド(13万3000円)のオプションだ。

さらに、価格という厄介な問題もある。

もっともベーシックなモデルでさえ、将来的なガソリン代の節約分を考慮したかのような、スーパーミニとしては強気のプライスタグを掲げているのだ。

ゾエの航続可能距離は大いに魅力的であり、このクルマはそれなりの実用性も備えていが、品質と洗練、そしてドライバーアピールの面で、他の2台に差を付けられている。

さらに、このクルマはミニやプジョーほどの高級なエンジニアリングを感じさせてはくれないが、それもゾエが3台でもっとも安価なプライスタグを掲げているのであれば納得出来たかも知れない。

つまり、ゾエを選ぶのであれば、今回のGTラインではなく、もっとベーシックなモデルの方がより説得力ある選択肢になるということだ。

絶妙なバランス EV社会の門戸を開く

一方、クーパーSはまさにプレミアムなモデルだと感じさせる。

ドライビングの楽しさで他の2台を圧倒するとともに、エントリーモデルの2万4900ポンド(331万円)という価格は、わずかな差ではあるがもっとも手ごろな1台でもある。

スポーツモードを選択するとe-208は強烈な加速を見せる。
スポーツモードを選択するとe-208は強烈な加速を見せる。

それでも、このクルマには航続可能距離の短さと、同じドイツのライバル、フォルクスワーゲンe-Upには勝るものの、高級だがスペースが足りないインテリアというふたつの弱点がある。

一般的なスーパーミニのドライバーは、時に家族の移動の足として後席にもひとを乗せたいと望むものなのだ。

ではプジョーはどうだろう?

もっとも説得力のあるモデルであり、ルノー同等の実用性と航続可能距離、そしてミニの品質と洗練を併せ持つという微妙なバランスを上手く保つことに成功している。

もっとも刺激的なドライビングが味わえるわけではないが、ほとんど妥協を感じさせることなく、広範な魅力と能力を実現しており、間違いなくやってくるEV社会に向け、多くのひとびとに門戸を開く存在となり得るだろう。

素晴らしいモデルだ。

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