WRCで活きた技術と経験:オペル・モンツァ FF 攻め立てると才能が輝く:アウディ・クワトロ (2)

公開 : 2024.01.21 17:46

世界ラリー選手権で活かされた技術と経験

スチュアート・ロルト氏は、モンツァ FFが自らにとっての成功作だったと考えている。「ラリーチームへのデモ走行は、今でも忘れません。それが、ビジネスの大部分を占めていました。ビスカス・カップリングのメリットを示すことが、重要だったんです」

FFデベロップメント社は、もっと多くのモンツァをコンバージョンしたいと考えていたはず。それでも、効果的で信頼性の高い四輪駆動システム技術を確立するうえで、一連のFFは極めて重要な役割を果たしてきた。

ライトブルーのオペル・モンツァ FFと、レッドのアウディ・クワトロ
ライトブルーのオペル・モンツァ FFと、レッドのアウディ・クワトロ

フォードRS200やシエラ XR 4x4iといった名車が、FFデベロップメント社の四輪駆動を採用。1990年代初頭の世界ラリー選手権では、スバル以外の全チームが、同社の技術や経験を頼ることになったのだ。

協力:ジム・ホフ氏、デレク・アンダーウッド氏、クワトロ・オーナーズ・クラブ

番外編:モンツァ FFの75%を所有するマニア

グレートブリテン島中東部のリンカンシャー州で農業を営み、クルマを愛するジム・ホフ氏は、世界屈指のオペル・モンツァ・コレクターだ。6台作られたモンツァ FFのうち、3台を所有しているのだから。

今回ご登場願った、FFデベロップメント社のデモ車両もその1台。1989年に放置された状態で発見した時は、誰かがフォード・シエラなどの四輪駆動システムを押し込んだ改造車だと考えていたらしい。

ジム・ホフ氏が所有する3台のオペル・モンツァ FF
ジム・ホフ氏が所有する3台のオペル・モンツァ FF

「ジェンセンFFくらいしか、古い四輪駆動のスポーツクーペを知りませんでした。FFデベロップメント社が、幾つかのモデルを製造していたことも。資料を確認し、非常に興味深いモデルだと知ったんです。それが、購入の決め手でした」

彼のガレージには、4台のアストン マーティンと、フィアット・パンダも停まっている。モンツァ FFは、人とは違うクルマに載りたいという、ジムの欲求を明らかに満たした。更に2台を迎え入れるほど。

6台のモンツァ FFのうち、1台は事故で失われた。もう1台は盗難後、行方不明になっている。つまり、生き残ったのは4台。彼の3台は、走れる状態が維持されている。

シルバーの1台は、現存する唯一のMT車だ。「1993年のクラシックカー・イベントで、ロルトさんとお話する機会がありました。最終的には、沢山のスペアパーツをいただいだんですよ」

現在の問題は、一般的なモンツァ用部品だという。マスエアフロー・センサーやブレーキキャリパーは入手が極めて困難で、多額の費用を投じてリビルドしたそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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