VW、中国車への関税「危険」と反対 EU規制めぐり各メーカーの “立ち位置” 鮮明に

公開 : 2024.03.18 18:05

EU(欧州連合)は中国製自動車に対して関税をかけ、価格差を縮めようとしている。VWグループやルノー、メルセデス・ベンツなどがこれに反対の姿勢を示す一方、ステランティスは規制強化を訴える。

欧州の中国車規制 VW、ルノー、メルセデスなどが反対

フォルクスワーゲン・グループは、欧州市場で中国車に関税を課すことに対し、競争を阻害し、中国での報復措置を招く恐れがあるとして懸念を示している。年次記者会見でオリバー・ブルーメCEOが語った。

「我々は自由で公正な世界貿易を支持している。すべての経済事業者は同じルールに従わなければならない。それは双方向に機能するものだ」

VWグループのオリバー・ブルーメCEOは、中国での報復関税のリスクを指摘する。(左:中国製のMG4 EV、右:フォルクスワーゲンID.3)
VWグループのオリバー・ブルーメCEOは、中国での報復関税のリスクを指摘する。(左:中国製のMG4 EV、右:フォルクスワーゲンID.3

「片方で保護主義的な行為を行えば、もう片方でもこのような保護主義を引き起こすという潜在的な危険がある」

欧州では安価な中国製自動車の販売台数が増加傾向にあり、不当な競争を危惧するEU(欧州連合)は相殺関税を課そうとしている。中国車が中国政府から受け取っている補助金を関税で相殺し、欧州車との価格差を埋める狙いだ。しかし、一部の欧州車メーカーはこうした姿勢に疑問を呈している。

中国はフォルクスワーゲン・グループにとって世界最大の市場の1つである。輸入車と現地の合弁パートナーによる現地生産車を合わせて、昨年は320万台を販売した。前年比1.6%増と好調で、市場シェアは14.5%を占める。

車種別では、小型EVのフォルクスワーゲンID.3や電動SUVのID.4が販売ランキングの上位に入る。

また、グループ傘下のアウディポルシェにとっても世界販売台数のかなりの割合を占めている。

さらに、シャオペン(Xpeng、小鵬汽車)やSAIC(上海汽車)、Horizon Robotics、Thundersoftなどさまざまな中国企業と戦略的パートナーシップを締結しており、最近では「インテリジェントで完全なコネクテッドカー」を開発する独立部門として、フォルクスワーゲン・チャイナ・テクノロジー・カンパニー(VCTC)を設立した。

EUが中国車に関税を導入すると、中国も欧州車に関税を導入する可能性があり、フォルクスワーゲン・グループの中国での業績に深刻な影響を及ぼすかもしれない。

「貿易協定、国際貿易協定に関しては、同じことをしなければならない。均衡を保ち、公平な競争条件を設けよう。それは欧州と中国の間だけでなく、世界の他の地域でも同じだ」

「関税や税金は合理的でバランスの取れたものでなければならない。我々は保護主義を支持しているわけではない。世界中の貿易地域間で均等なバランスを保つことを望んでいる」

ブルーメCEOはこのように述べ、相殺関税の潜在的なリスクを訴えかけた。

メルセデス・ベンツのオラ・ケレニウスCEOは今週初め、中国の自動車メーカーが欧州で公平に競争しているかどうかを調査するというEUの決定に疑問を呈した。

「我々企業は保護を求めているわけではないし、中国の優良企業も保護を求めていないと思う。彼らは他の企業と同じように世界で競争したいのだ」

「関税を引き上げないでほしい。わたしは反対だ。わたしは逆に、今ある関税を引き下げればいいと考えている」

また、ルノー・グループのルカ・デ・メオCEOも以前、中国ブランドの欧州市場での自由な活動を歓迎し、「欧州の消費者のために良いことをする人たちが市場に参入し、彼らが望むものを提供することを認めない理由はない」と述べていた。

一方、EUに同調するメーカーもある。ステランティスのカルロス・タバレスCEOは、中国車と欧州車の過剰な価格差を制限することで、欧州の自動車産業を保護するよう長く訴えてきた。

タバレスCEOは以前、「欧米の自動車メーカーが中国で競争するよりも、中国の自動車メーカーが欧米で競争する方が有利である。EUは広く開かれており、受け入れられない。我々よりも簡単なルールで欧州に進出している中国企業を支援してはいけない」と述べた。

このように、EUの関税導入を巡って各社の意見が対立している状況だ。

フォルクスワーゲン・グループのブルーメCEOは、中国企業に制限を課すことは、欧州企業による技術革新や投資を阻害することになるため、競争の観点からは逆効果になると指摘する。

「純粋に、競争は非常にポジティブなものだと言える。競争はスポーツのように、他者よりも優れようとすることに拍車をかける。ライバルが一緒に走っていれば、より革新的になれる。そして、この革新は、顧客を含む我々全員にとって有益なことなのだ。それが最高の状況だ。勝つための最善の方法は、他者よりも優れていることだ」

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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