マセラティ・ギブリ

公開 : 2014.07.26 15:32  更新 : 2017.05.29 19:12

クアトロポルテがメルセデスのSクラスBMWの7シリーズ、あるいはアウディA8のライバル車としてボディを拡大しLセグメントに移行した中で、現行ギブリマセラティ初のEセグメント4ドアモデルと紹介するレポートも目にするが、先々代クアトロポルテの全長が4550mmであったことを考えると、その紹介は正しいとはいえないだろう。

しかし、長らくクアトロポルテと2ドアクーペ/カブリオレの量産3モデルで勝負してきたマセラティにとっては久々のニューモデルであり、その期待感が相当なものであることは誰の目にも明らかなはずである。つまり、マセラティは、このモデルで群雄割拠のプレミアムEセグメントで存在感を不動のものにしようと企て、その意気込みが本気であると分析可能だ。ギブリの登場こそが2015年までに年間5万台というマセラティ・ブランドの生産台数目標の根拠のひとつであり、その自信がこの大きな数字にも表れている。ギブリは、マセラティにとっても失敗が許されないモデルなのだ。

とすれば、ギブリが用意周到にライバルを研究し、クオリティやパフォーマンスにも相当な配慮がなされているという予想は容易い。エクステリアからは、少なくともそうした事実が感じ取れる。今回試乗したモデルがそうであるように、ギブリS Q4以外に右ハンドルモデルがラインナップされるのもそれを裏付けるひとつの要素であろう。

スタータースイッチを押した瞬間に乾いた、いかにもマセラティといえるサウンドを発するパワーユニットは、ギブリ Sなどと同じ、フェラーリのマラネロ工場で生産される3.0ℓのV6ツインターボエンジンだ。ギブリ Sと比べれば絶対的なパワーでは劣るものの、前述のとおり最高出力330ps、最大トルク51.0kgmと、十分な値を示す。2tに迫るボディながら0-100km/h加速はわずか5.6秒。最高速度はメーカー公称値で263km/hで、老舗スポーツカーブランドのマセラティらしいパフォーマンスは、エントリーモデルであっても健在である。アクセルへのレスポンスも良く、おそらく410psを敢えて選ぶまでもないと感じる人は多いはずだ。

トランスミッションはZF社と共同開発の8段ATで、これは他グレードと同一である。シフトプログラムも他グレードと同様に、Auto Normal/Auto Sport/Manual Normal/Manual Sport/I.C.Eの5種類のモードを備えている。Sportではより高回転までギヤを引っ張り、不要なギヤチェンジを抑えるようなプログラミングされている。ただし、パドルシフトはオプションアイテムなので(取材車には未装備)、走りを楽しむのならば、必須の装備となる。

バイワイヤとなるシフトレバーは、クリック感に乏しく、パーキングからリバースにシフトするのにちょっとしたコツが必要だ。これはギブリに限ったことではなく、左ハンドルモデルのギブリS Q4でも同様で、要改善ポイントである。

当たり前と言わんばかりの安定感
縦置きエンジン直後にトランスミッションをジョイントする一般的なFRレイアウトながら、50:50の静止重量配分を維持。サスペンションは、フロントにダブルウィッシュボーン、リヤに5リンクサスペンションを採用した。上級モデル同様に、オプションでスカイフックサスペンションも選択可能である。LSD(リミテッドスリップディファレンシャル)を同セグメントでは初めて標準装備としたのも、マセラティ流のこだわりなのかもしれない。

トランスアクスル未採用ながら、そのバランスやシャシー性能は抜群だ。高速で、例えばダブルレーンチェンジを行っても、破綻なくわずかなステアリング操作で元のレーンに安定した挙動のまま戻ることが出来る。ステアリング操作へのこれは、上級モデル、ギブリS Q4でも見ることの出来るギブリの美点である。アジリティをことさら強調しなくとも、マセラティを名乗る以上、これくらいはできて当たり前と言わんばかりの安定感だ。

ただし、そのフィールは4WDのギブリS Q4とは少し異なっている。FRのギブリはステアリングの切り始めが素直で、スッとノーズがインを向く感じが、より顕著に手のひらを通して伝わる。それはボディサイズの割に軽量な、まるで大排気量、大トルクのFRスポーツカーをドライブしているという感覚に近い。出来の良いFRをドライブしている満足感に浸れるのが、ギブリの美点である。

しかし、ここから加速体制に移ったとき、よりスタビリティが高いと思わせるのはさすがにギブリS Q4の方だ。4WDなのだから当たり前かもしれないが、フロントに掛かっている駆動力を意識させないFRに近い自然な走りのまま、それをこなすのである。どちらがスポーティかと聞かれると、回答に困るほどギブリS Q4の動きもナチュラルでファンだ。ちなみにギブリS Q4には前後のトルク配分をオンデマンドで表示するモニターも備えており、これを見ながらドライブするのも楽しい。フロントは最大で50%のトルクが分配されるというが、アクセルオフ時に0:100と表示されるぐらいで、それ以外は、ほとんどの場合で前輪にもトルクが伝わっていることがこの表示によって確認できる。

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