メルセデス・ベンツEQS 詳細データテスト 望外の操縦性 SUVよりMPV的 シートの操作に不満 

公開 : 2024.03.30 20:25

快適性/静粛性 ★★★★★★★☆☆☆

超ソフトなサスペンションといえば、ふんわりした快適な乗り心地を期待するだろう。ある程度までなら、それは正解だ。波長の長い乗り味は、高速道路やA級道路で、いわゆる魔法のじゅうたん的なフィーリングをもたらしてくれる。

問題が起きるのは市街地で、サイドウォールの厚いタイヤを履いているにも関わらず、エアサスが粗い路面をいなしきれない場合だ。ドタバタして、不快な乗り心地となってしまう。

低速域ではやや乗り心地の粗さが気になるが、ハイウェイや幹線道路は心地よく走る。高速移動での快適性に重点を置いたと思わせるフシのあるセッティングだ。
低速域ではやや乗り心地の粗さが気になるが、ハイウェイや幹線道路は心地よく走る。高速移動での快適性に重点を置いたと思わせるフシのあるセッティングだ。    JACK HARRISON

言い換えるなら、EQS SUVがお気に召すかどうかは、使い方に大きく依存するということになる。市街地での上質感や静粛性を多少ながら犠牲にしてでも、高速道路で驚くほど心地いいクルマに仕立てている印象なのだ。その要因となるのが、遮音とシートである。

80km/h巡航で60dBAという騒音値はじつにみごとなものだ。ロードノイズはほぼ完璧に遮断され、高速道路の速度域に入っても風切り音がわずかに増す程度。113km/hで65dBAというのもかなり静かではあるが、最近テストしたポルシェカイエンSと同程度で、新たな基準を打ち立てるほどではない。

シートはメルセデスらしく、硬めだがサポート性が高い。ビジネスクラス仕様では、ヘッドレストに過保護なくらい柔らかいピローが備わる。ちょっとばかり悩まされるのが、ランバーサポートとサイドサポートの調整だ。タッチ画面のメニューにあるスライダーが過敏で、うまくアジャストできないのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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