メルセデス・ベンツEQS 詳細データテスト 望外の操縦性 SUVよりMPV的 シートの操作に不満 

公開 : 2024.03.30 20:25

結論 ★★★★★★★☆☆☆

メルセデス・ベンツのラインナップにおいて、EQS SUVがどのような役割を担うのか。その疑問にたいする明確な答えは、今のところまだ提示できない。いかにもSUV購入者が好みそうなたくましいオフローダー的なルックスは持ち合わせていないし、ファミリーカーとしてはあまりにも高価で、しかもバーサタイルさにも不満が残る。

ネーミングは、Sクラス級の電動SUVを示唆している。しかし、このクルマを見ていると、かつてのRクラスがEVとしてよみがったように思えてくる。

結論:超高級7シーターは、MPVのテリトリーに足を踏み入れたかと思えるものになっている。
結論:超高級7シーターは、MPVのテリトリーに足を踏み入れたかと思えるものになっている。    JACK HARRISON

2006年に登場し、販売面では苦戦した高級MPVのRクラスと同様に、EQS SUVもクオリティは申し分ないところが数多く挙げられる。ドライブトレインはすばらしく、シャシーのテクノロジーは重すぎるウェイトをみごとなまでに手懐けている。

デジタル化の問題も比較的うまく解消している。また、良好な遮音性とエルゴのミックなシートが、ゆったりとした移動を可能にしてくれる。

超高価で超高級な7シーター電動SUV、という特異なカテゴリーを提案したEQS SUV。だが、少なくともRクラスにノーを突きつけた英国市場に、こうしたクルマを望むユーザーはそう多くなさそうだ。
 

担当テスターのアドバイス

イリヤ・バプラート

このEQS SUVをテストした直後、BMW X6に乗った。X6のほうが小さいクルマなのだが、取り回しではまるでオイルタンカーを操縦しているように感じられた。

マット・ソーンダース

白いインテリアの軽やかさは好みだが、豪華なファミリーカーとして使うなら、黒いレザーのAMGライン・プレミアムプラスを選びたくなるだろう。白いカーペットなんて、掃除が行き届いた駐車場だけを利用して、雨や雪の中を走らないのでなければとても選べない。

オプション追加のアドバイス

580を検討する必要はない。450で十分に速い。ホワイトインテリアとマッサージ機能が必要ならビジネスクラスを選ぶほかないが、価格は高く、付随するエンターテインメントパッケージに金額に見合う価値はない。

改善してほしいポイント

・シートのフォールドやスライドをもっと速く、簡単で直感的にできるようにしてほしい。あと、荷室カバーの収納場所があるとうれしい。
・低速域でのセカンダリーライドは改善を。
・画面の角度は見直しを。また、補助ディスプレイにはもっとツールを加えて、iPadと勝負できるものにしてもらいたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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