メルセデス・ベンツEQS 詳細データテスト 望外の操縦性 SUVよりMPV的 シートの操作に不満 

公開 : 2024.03.30 20:25

意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆

EQS SUVは、GLEGLSEQE SUVと同じくアメリカのタスカルーサ工場製で、フォードF−150とも肩を並べるようなアメリカンサイズだ。

5125mmという全長は、BMWアウディのもっとも大きいEV、具体的には4953mmのiXや4915mmのQ8 E−トロンより長い。5209mmあるICEモデルのGLSに近いが、EV専用プラットフォームを使用するので、ボンネットもオーバーハングも短く、ホイールベースは長い。7座レイアウトも可能にし、英国仕様は全車3列シート仕様となる。

テスト車には未装着のランニングボードが、改良後は標準装備される。下面はタイヤ裏のエアフローとダイレクトにつながる形状で、空力効率を高める。
テスト車には未装着のランニングボードが、改良後は標準装備される。下面はタイヤ裏のエアフローとダイレクトにつながる形状で、空力効率を高める。    JACK HARRISON

プラットフォームは、サルーン系のEQSと同じEVA2。バッテリーはデビュー時が108.4kWh、すぐに登場したアップグレード版は118.0kWhと大容量だ。2024年1月以降は全車拡大されたバッテリーを積むが、今回のテスト車はアップグレード前の仕様となる。一般的なニッケル・マンガン・コバルト式だが、前世代よりコバルト含有率が10%ほど減少している。

当然というべきか、大きなバッテリーを積めば車両重量も増す。公称値は2730kg、テスト車の実測値は2899kgだった。バッテリーが拡大された仕様は、3tに届いてしまう。

英国仕様は、エアサスとアダプティブダンパーが標準装備。110km/h以上では車高を下げて空気抵抗低減とスタビリティ向上を図り、80km/h以下になるとまた車高が上がる。また、2モーターの4WDと、最大10度可動する後輪操舵も、英国仕様は全車に搭載。11.0mという回転直径は、なんとAクラスと同じだ。

EVの効率にとっては、重量より空力のほうが重要で、それがデザインを決定づけているのはEQSやEQEと同様だ。パネルを張ったグリル部分や、丸みを帯びたフロント周り、傾斜の大きいフロントウインドウなどはその結果だ。リアディフューザーのリップや、アンダーボディのさまざまなスポイラーも寄与して、実現した0.26というCd値は、Q8 E−トロンの0.28を凌ぐ。しかし、iXはさらに上を行く0.25だ。

効率について語るならば、ヒートポンプ未搭載なのは驚きだ。パワートレインの排熱をキャビンの暖房に使用しているとのことで、ほとんどの環境で十分に機能するようだが、今後の改良でヒートポンプが追加されることになりそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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