「実燃費と違いすぎ」で規制強化も? 欧州燃費テストの “欠点” 浮き彫りに WLTP改正の可能性

公開 : 2024.04.15 18:05

今後どうなる?

PHEVの実際の充電パターンに対する反応(来年にはCO2排出量の計算方法が変更される)を除けば、欧州委員会の報告書は比較的穏やかなトーンであった。

欧州委員会は、初期データはまだ「確固とした結論を導き出せるほど広範で代表的なものではない」としながらも、WLTPとの乖離が大きい大型SUVや高級車について懸念を表明した。

今後、特に大排気量、重い大型SUV、高級車への規制が厳しくなるかもしれない。
今後、特に大排気量、重い大型SUV、高級車への規制が厳しくなるかもしれない。

一方、欧州会計検査院の出した報告書はさらに厳しいものだった。欧州委員会と加盟国が実際のCO2排出量データを期限内に提出しなかったことを戒めるとともに、法規制も大きく改めるよう求めているのだ。

欧州会計検査院はまず第一に「2030年以降の排出削減目標を達成するための重要な課題は、ゼロ・エミッション車の十分な普及を確保することである。特に、電気自動車(EV)の価格への対応、十分なEV充電インフラの提供、バッテリーの原材料の確保が重要になる」とした。

第二に、欧州委員会に対し、2026年までに現行の排ガス規制を廃止するよう求めた。「欧州委員会は、現行のEUおよびメーカーレベルの目標を、ゼロ・エミッション車の最低シェアに基づく目標に置き換え、(現行の)CO2規制を変更することの実現可能性、コスト、便益を評価すべきである」

さらに「メーカーレベルでの実排出量上限を設定し、あらゆるタイプのハイブリッド車を含む内燃エンジン車について、上限を超えないようにすること」を求めた。

これらの要求は、EVを除くすべての内燃エンジン車にスポットライトを当てている。行間を読むと、大排気量車やSUV、高級車のような大型・重量車の販売が容易に抑制される可能性がある。

EUの発表では、消費者が比較的ハイスペックで重量のある内燃エンジン車を選んでいることが示唆されている。欧州会計検査院の報告書はその影響を受けたのかもしれない。

欧州の燃費・排ガス規制が今後どのような展開を見せるかはわからないが、いずれにせよ自動車業界は欧州で再び激震に見舞われることになりそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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