スポーティ「フレーバー」を楽しむ フォルクスワーゲン・カルマンギア MGBに代わる1台を選ぶ(5)
公開 : 2025.01.19 17:45
スポーティなフレーバーを楽しむ
そうはいっても、クルマだから走るのが本分。フラットなフロアパンへ据えられたシートへ腰を下ろすと、目線はかなり低い。ボンネットが前方で弧を描き、トランクリッドが後方視界の一部を彩る。スポーティな雰囲気を醸し出している。
排気音は、おなじみのガサついたフラット4ノイズ。シフトフィールは例によって曖昧で、レバーでゲートを探り出す必要がある。社外品のショートシフト・キットを組むと、大幅に選びやすくなるが。

走り出してみると、印象はビートルと大きくは違わない。低く屈んだフォルムだから、最高速度は少し高いはず。しかし局面的なボディパネルを繋ぎ合わせるため、ギア社の職人は軽くない溶融鉛を利用している。車重は、ビートルからだいぶ増えていた。
細いタイヤでカーブへ突っ込むと、例によってアンダーステア。リアに載ったエンジンの荷重移動次第では、オーバーステアへ転じる。しかし、50km/h程度で走っている限り、心配は無用。スポーティなフレーバーを、楽しんでいるのが良い。
ビートルと部品の多くを共有し、スペアパーツの入手は今でも難しくない。フォルクスワーゲンの専門店を訪ねれば、必要な部品の殆どを揃えてくれる。クラシックカーとしては、維持費は懐に優しい。
ただし、ボディパネルは高価。予め、腐食が少ない例を選ぶのが賢明だろう。
最もセクシーなボディを持つ1台
英国での中古車価格は、クーペなら1万2000ポンド(約234万円)程から。今回ご登場願ったコンバーチブルは珍しく、5000ポンド(約98万円)前後のプレミアが載る。
北米から輸入された左ハンドル車が殆どで、状態によって値段には大きな幅がある。選択肢は、今回比較する6台では1番多い方といえるだろう。

レッドのカルマンギア・コンバーチブルのオーナーは、ジョン・ニコラス氏。1969年式を、8年前に購入したという。「最もセクシーなボディを持つ1台ですよね」。と話す通り、彼は今でも惚れ込んでいる。
数年前、オーナーズクラブのイベントで、雨がちなスコットランドを数日間ドライブしたとか。劣化したシールから雨水が流れ込み続けたが、妻もカルマンギアが大好きなのだと、改めて確認することになったらしい。
「ブレーキは改良した方が良いかもしれません。でも、全体的には所有する価値のある、素晴らしいクルマだと思います」。筆者も強く同意する。
編集部によるマニア度スコア
コストパフォーマンス:2/5
メンテナンス性:5/5
修理部品の入手性:4/5
実用性・使いやすさ:3/5
運転体験の魅力:2/5
クルマ好きの話題性:4/5
合計:20/30
フォルクスワーゲン・カルマンギア・コンバーチブル(1957〜1974年/英国仕様)のスペック
英国価格:1166ポンド(クーペ/新車時)/3万5000ポンド(約683万円/現在)以下
生産数:8万877台(コンバーチブルのみ)
最高速度:135km/h
0-97km/h加速:21.3秒
燃費:9.5km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:870kg
パワートレイン:水平対向4気筒1584cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:57ps/4400rpm
最大トルク:11.3kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル(後輪駆動)
この続きは、MGBに代わる1台を選ぶ(6)にて。
