美ボディはフェラーリ166 MMに影響 フィアット・バルケッタ MGBに代わる1台を選ぶ(4)

公開 : 2025.01.18 17:46

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フェラーリ166 MMへ影響を受けた美ボディ

筆者は、フィアットバルケッタに特別な思い入れがある。憧れを通り越して、羨望の眼差しさえ向けてしまう。20世紀の終わりに誕生した2シーターのロードスターでは、最も美しいスタイリングの1台だからだ。

英国のフィアットも、そのボディこそ最大の武器だと捉えていた。「左ハンドルなことを、誰が気にするの?」というキャッチコピーを掲げ、グレートブリテン島のドライバーへ訴求した。

フィアット・バルケッタ(1995〜2005年/欧州仕様)
フィアット・バルケッタ(1995〜2005年/欧州仕様)

フィアットのデザイナーだった、アンドレアス・ザパティナス氏がインスピレーションを得たのは、1948年のフェラーリ166 MMだったとか。バルケッタという名前も、ここから来ている。

ドアパネルへ巧みに一体化されたドアハンドルは、1947年のチシタリア・ピニンファリーナ・クーペを参考にしたもの。荷室の容量へ影響を与えず、リアデッキへ綺麗に折りたたまれるソフトトップは、フィアット850 スパイダーの処理と重なる。

プラットフォームは、スタイリングと比べると一般的なものだった。フィアットのタイプBと呼ばれた前輪駆動モデル用で、同時期のプントと共有。金属製のルーフを備えないぶん強化され、フロントガラス・フレームはロールバーの役割も兼ねている。

サスペンションは引き締められた。ダンパーとスプリングはバルケッタ独自のアイテムで、スポーティな走りを叶えている。

小気味良いレスポンス 乾いたサウンド

1747ccのDOHC 4気筒エンジンは、130psしか発揮しないものの、車重は1056kgと軽量。可変式の吸気システムとバルブシステムを採用し、幅広い回転域で優れたパワーを発揮した。0-97km/h加速は8.6秒、最高速度は189km/hに届いた。

バルケッタは、2003年にフェイスリフトを受けている。今回ご登場願ったブルーの1台は、リチャード・ローマンがオーナーの2001年式で、前期型になる。

フィアット・バルケッタ(1995〜2005年/欧州仕様)
フィアット・バルケッタ(1995〜2005年/欧州仕様)

久しぶりに運転してみると、充分な力強さを感じられるが、カタログ値の動力性能は甘いものに思えてくる。特に追い越し時は、しっかりタイミングを測って、巧妙に速度を引き出す必要がある。

全体的なまとまりは良い。アクセルレスポンスが小気味よく、マツダMX-5(ロードスター)ほどではないものの、5速MTのフィーリングにも充足感がある。回転数を引っ張ると、2本出しのマフラーから乾いたサウンドが奏でられる。

カーブでは左右のロールが大きめだが、姿勢制御は程よくタイト。気になる点といえば、荒れた路面でステアリングコラムへ僅かに揺れが伝わることくらい。

シートポジションは低い。ステアリングホイールにはエアバッグが装備されている。プラスティック然としたメーターパネルに、白い盤面のメーターが埋まっている。ボディと同色の化粧トリムが散りばめられ、エアコンも備わり、充実した空間だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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