ステーションワゴンも存在 ジャガーXJ-S 21年作られた大猫(2) 特別な暮らしを送れそう?

公開 : 2025.02.09 17:46

遠くから違いがわかるリスターのサウンド

このアイデアは、WPオートモーティブ社とともに実現された。通常の5.3L V12エンジンの排気量は、5955ccへ拡大。バランス取りされた強化クランクシャフトと、コスワース社製の鍛造ピストン、独自のシリンダーヘッドやバルブなどが与えられた。

インジェクションにスロットルボディ、マニフォールドも専用品。これでは飽き足らず、スーパーチャージャーで過給される7.0L仕様も用意された。

リスター・ジャガーXJ-S 6.0 MkIII(1986〜1994年/英国仕様)
リスター・ジャガーXJ-S 6.0 MkIII(1986〜1994年/英国仕様)    ジョン・ブラッドショー(John Bradshaw)

今日ご登場願ったのは、6.0Lエンジンのリスター・ジャガーXJ-S 6.0 MkIII。17インチの2ピース・アルミホイールに、フィット感の高いエアロキット、丸目4灯のヘッドライト、マット仕上げのグリルやウインドウトリムなどで違いが主張されている。

サスペンションは引き締められ、ローダウン。インテリアは、リスター流の高級感で仕立て直されている。

その姿を見ずとも、聞こえるサウンドで遠くから違いがわかる。接近すれば、背筋がゾクゾクするほど刺激的。とはいえ、飛ばしていない限り、リスターは上質で穏やかだ。

5速MTのレバーは若干引っかかりがあり、ゴムのような手応えながら、ギア比は適切。クラッチペダルは重すぎない。カーブへ飛び込んでも、しっかりボディは遠心力に耐えてくれる。車重を感じさせないほど、身のこなしは機敏だ。

チューニングの結果得た音響が、実際以上のスピード感を生む。1986年にAUTOCARが実施したテストでは、5.3Lエンジンのリスターは0-100km/h加速を5.6秒でこなした。

特別なライフスタイルを今でも謳歌できそう

そして今回の5台目となるのが、XJ-SCの後を1988年に継いだコンバーチブル。前方から完全に折りたたまれるソフトトップが備わり、+2のリアシートも残されている。

1989年に、ジャガーはフォードによって買収。多額の投資が実施され、クーペとコンバーチブルは1991年にフェイスリフトが施された。V12エンジンは6.0Lへ、直6は4.0Lへ排気量が拡大。モデル名も、XJ-SからXJSへ改められている。

ジャガーXJS 4.0 コンバーチブル(1992〜1996年/英国仕様)
ジャガーXJS 4.0 コンバーチブル(1992〜1996年/英国仕様)    ジョン・ブラッドショー(John Bradshaw)

スタイリングは、ジェフ・ローソン氏の手でアップデート。前後のバンパーやバットレスが美しく処理し直され、オリジナルの雰囲気はそのままに、モダンさが追加された。

レッドのXJS コンバーチブルは、ジャガー・デイムラー・ヘリテージトラストが所有する1台。最終年式となる、1996年式のセレブレーション仕様で、走行距離は1万kmを過ぎたばかり。新車のような雰囲気を漂わせる。

インテリアの品質は大幅に改善しており、人間工学も明らかに優れ、全体的に扱いやすい。最高出力は226psで、そこまで速いとは感じられないが、ひときわ洗練されている。オープンでゆったり流すのも気持ち良いが、飛ばしても充足度は高い。

1975年の発売から、21年も生産が続いたXJ-S。モデル末期のXJSは、若干熟れすぎていた事は否めないだろう。だが改めて運転してみると、当初のパンフレットでイメージされていた、特別なライフスタイルを今でも謳歌できそうに思えた。

協力:XJSクラブ、ジャガー・デイムラー・ヘリテージトラスト、英国自動車博物館

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ジャガーXJ-S 21年作られた大猫の前後関係

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