【第5回】森口将之の『もびり亭』にようこそ:ウーブンシティはインフラにこそ注目したい

公開 : 2025.02.12 17:05

歩車分離の明確化で人と乗り物のよりよい共存環境へ

新型車のように、特定小型原付などもまずクローズドな場でテストを重ね、問題なければ公道に展開していくというプロセスが理想だと思っていますが、これまでは、それにふさわしい場がありませんでした。

そこで注目なのがウーブンシティです。車道と歩道のほかに、パーソナルモビリティのための道が用意されるからです。しかも最終的には、社員や研究者など約2000人がここに住むことになります。日常生活の中で、低速・中速・高速の3つの道がどのように機能するかを試せるのは、とても貴重です。

国道を歩道化した日本初の歩行者天国、北海道旭川市の平和通買物公園。もともと国道に面していた店舗が、歩道沿いに残された実例だ。
国道を歩道化した日本初の歩行者天国、北海道旭川市の平和通買物公園。もともと国道に面していた店舗が、歩道沿いに残された実例だ。    森口将之

先月の発表とともに公開された画像では、歩道はたしかに遊歩道のような作りで住宅地の中を巡っており、車道とはっきり分けられています。従来は歩道になっていた車道の両脇が、パーソナルモビリティのための道になるのかもしれません。

当然ながら、これまでは車道脇にあった商店や飲食店は、遊歩道に面して設けられることになるでしょう。となると、世界的なトレンドになっているウォーカブルシティにも該当しそうです。

このレイアウトを既存の市街地に入れるのは大変だと思うかもしれませんが、そうでもありません。もともとお店が多かった道路を歩行者専用とすれば良いのです。

日本初の歩行者天国である、北海道旭川市の平和通買物公園はその実例で、元は国道だった道を歩道化したので、国道に面していた商店や飲食店がそのまま歩道沿いに並んでいます。

新しい車両がテストコースで走行を重ね、市場に送り出されるというのは、多くのクルマが行っているプロセスです。ウーブンシティはそれだけではなく、人やほかの乗り物とどのように共存し、生活空間に組み込まれていくかまでテストされるはず。個人的にはむしろそちらに注目しています。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。

森口将之の『もびり亭』にようこその前後関係

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