アストン マーティン 2030年までにEV発売 ハイブリッド車と派生モデルにも注力、今後の計画は

公開 : 2025.02.06 06:05

電動化計画

以前の経営陣は、電動化への道のりにおける「過渡的」技術として、プラグインハイブリッド・パワートレインを使用する計画を推進していた。メルセデスAMGとの技術提携により、間もなく登場するヴァルハラは同社初のPHEVモデルとなるが、他にも複数のモデルに同技術を応用できる。

ホールマーク氏は、電動化の道筋は「3~5年前ほど明確ではないが、全体的な方向性は間違いなく電動化に向かっている」とし、「当社のコミットメントはカーボンニュートラル、あるいはネットゼロである。しかし、そこに到達するために、ハイブリッド分野で段階的に製品を追加していくつもりだ」と述べた。

アストン マーティン・ヴァルキリー
アストン マーティン・ヴァルキリー

それでも、アストン初のEVは「2020年代には登場する」が、「ハイブリッド派生モデルも2035年までに追加する」という。前経営陣はEVの発売時期を2027年としていたが、ホールマーク氏はCEO就任前からその点に疑問を抱いており、具体的な時期については言及を避けた。

また、同氏は「最初のEVモデルについては、必要条件はすべて定義済みであり、そのうちのいくつかは開発を終えている」と付け加えた。アストン マーティンは、米EV企業ルーシッドの電気モーター、バッテリー制御システム、インバーターを使用する契約を結んでいる。

最初のEVは完全な新規開発になるのか、それとも既存モデルをベースにするのか、という質問に対し、ホールマーク氏は「当社の規模の企業であれば、既存のモデルを切り替えて思い切った策を取るか、ニッチ市場向けのモデルを開発して徐々に拡大していくかのどちらかになる。まだ完全に決定したわけではない。当初の計画では徐々に拡大していくモデルにする予定だったが、他の選択肢も検討している」と答えた。

今後10年間は「柔軟性」を重視したアプローチを取り、「法規制や顧客のニーズに適合する複数の選択肢を用意する」という。

2030年までは「ある程度の電動化を伴う」エンジン車が販売の大半を占め、最終的には「2035年から2040年の間に完全電動化される」との見通しだ。

「我々は抵抗しているわけではない。ただ法律を考慮し、小規模企業にとってリスクの高い時期を乗り切ろうとしているだけだ。エンジン、ハイブリッド車、EVを製造し、どれが成功するかを見極めた上で他の工場を閉鎖するような余裕はない」

ラインナップ強化

ホールマーク氏がアストンへ移籍した直後に、同社史上最大の製品攻勢が始まった。新型DB12ヴァンテージヴァンキッシュ、そしてハイパーカーのヴァルキリーを展開したのだ。

同氏はそれらのモデル展開が予定通りスムーズに進んでいないことを認め、EVは別として、さらに新しいモデルラインは2030年以降にならないと登場しないことを示唆した。その代わり、既存モデルの潜在能力を最大限に引き出すことに焦点が絞られる。

アストン マーティンDB12
アストン マーティンDB12

モデルバリエーションが限定的である現状については、既存顧客が他社に流れるリスクがある、と危機感を示した。ここで例に挙げられたのは、ヴァンテージのライバルであり、多数のバリエーションを展開しているポルシェ911だ。

「現在、顧客はヴァンテージ、DB12、DBXのいずれかを購入し、2年ほど所有している。これは高級セグメントにおける平均的な所有サイクルだ。つまり、2年後にはより優れたヴァンテージを買う理由が必要となり、さらにその2年後にはさらに優れたヴァンテージが必要となる。当社には、必要なライフサイクル・イノベーションがこれまでなかった。競合他社がやっているのに、当社がやっていないのであれば、成功を収めることはできないだろう」

一部のライバルブランドが200以上のオプションや追加装備を提供していることを受けて、アストンも高級オプションを大幅に拡大していく方針だ。「チタン製エグゾースト、カーボンホイール、ハイエンドオーディオなど」、追加できるオプションをすでに約100項目特定したという。

「これらを追加し、通常レベルの需要を確保できれば、年間ベースでの収益改善は大幅なものとなるだろう。さらに重要なことに、顧客ニーズへの適合という点で大きな効果が見込める」

記事に関わった人々

  • ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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