マクラーレンF1とはまったく異なる体験? 最新「T.50」の助手席へ同乗 GMAを訪問(2)

公開 : 2025.02.05 19:05

新社屋がほぼ完成した、ゴードン・マレー・オートモーティブ(GMA) 量産が本格化したT.50 運転体験はマクラーレンF1とまったく違う? 英編集部が最新の施設とスーパーカーを体験

フランキッティは「ロードカーが大好き」

レーシングドライバーの中には、ロードカーへ夢中になれないと話す人が少なくない。サーキットを疾走するスリリングな体験は、遥かに速度域の低い公道では決して得られるものではない。彼らにとって、スピードは重要な要素なのだ。

しかし、アメリカのインディカー・シリーズで4度のチャンピオンに輝き、インディ500で3度も優勝を奪ったダリオ・フランキッティ氏は違う。「自分はロードカーが大好きなんです」。スコットランド生まれの彼が、朗らかに話す。

ゴードン・マレー・オートモーティブ(GMA)の新社屋と、GMA T.50(英国仕様)
ゴードン・マレー・オートモーティブ(GMA)の新社屋と、GMA T.50(英国仕様)    ブランドン・パウエル(Brandon Powell)

「自分はロードカーへ夢中だと、見られているかもしれませんね。むしろ、すべてのクルマが好きなんです。5歳の時からずっと」。今日はグレートブリテン島でもアスファルトの穴が多いサリー州で、真新しいGMA T.50を運転してくれるという。

彼は、ランチア・デルタ・インテグラーレを乗り回すのが大好きらしい。フェラーリF40は、25年間も所有している。ポルシェ・カレラGTや、フェラーリF355、1984年式のアストン マーティン V8ヴァンテージも大切にしている。間違いないクルマ好きだ。

そんな嗜好が、GMAにとっては理想的だった。名刺によれば、フランキッティはブランド/パフォーマンス/プロダクト・ディレクターという肩書を持っている。

わかりやすく表現するなら、開発技術者とゴードン・マレー氏とのパイプ役だろう。トップが望む通りのクルマに仕上げることが、最大の使命といえる。

3桁台に留めた車重 V12エンジンの柔軟性

そして、テストドライバーでもある。この取材の翌日にはスペインへ移動し、1週間に及ぶ試験走行を実施する予定だという。

彼の弟、マリノ・フランキッティ氏も、ポルシェ911レストモッドを手掛けるシンガー社で、同じような役目を担っている。レーシングドライバーの誰もが、ラップタイムを削るのではなく、運転体験を評価する技術者へキャリアチェンジできるわけではない。

GMA T.50(英国仕様)
GMA T.50(英国仕様)    ブランドン・パウエル(Brandon Powell)

マレーは、加速力や旋回Gといった測定での数字は、気にしないと話す。T.50は驚異的に速いスーパーカーだが、彼が手掛けたマクラーレンF1と同様に、運転へ深く関与できるよう開発されている。スピードだけではない。

フランキッティの口からは、「感触」や「反応」といった単語が頻繁に出てくる。GMAのチームがT.50で誇りとするものの1つは、3桁台に留めた車重ではあるが。

筆者がT.50へ乗るのは、今回が初めて。中央が運転席で、その両脇に助手席が据えられた3シーターだ。彼は3速に入れたまま、歩くような速度で交差点を通過する。自然吸気の4.0L V型12気筒エンジンの柔軟性と、ボディの軽さを裏付ける。

「運転すれば、理解していただけると思います。重く感じないこと、反応の速さがわかるはずです」。あいにく、今日は運転が許されていない。しかし左側の助手席でも、乗り心地の良さは感じ取れる。スーパーカーの基準で、最低地上高はかなり高い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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