ステランティス 英ルートン工場、6月までに閉鎖 生産拠点を1か所に「統合」

公開 : 2025.02.11 06:25

ステランティスは英国のルートン工場を6月までに閉鎖し、イングランド中西部にあるエルズミアポート工場へ設備を移す。ヴォグゾールの生産活動は1か所にまとめられることになる。

エルズミアポートへ集約 前CEOの決定覆さず

ステランティスは、4月から英イングランド南部にあるヴォグゾールのルートン工場の閉鎖作業を開始し、6月までに生産を完全に終了することを、AUTOCARに確認した。

2024年11月、長年商用車を生産してきた同工場の閉鎖が発表され、ヴォグゾールの英国事業は中西部エルズミアポートに移転することになった。移転後の生産は、10月に開始される。

ルートン工場の閉鎖は、ステランティス前CEOのカルロス・タバレス氏が決定した。
ルートン工場の閉鎖は、ステランティス前CEOのカルロス・タバレス氏が決定した。

ステランティスは声明で、次のように述べている。

「2025年第2四半期にルートンでの生産を終了し、その後、設備や工程に関する知見をエルズミアポートに移転する期間を設ける」

「エルズミアポートにおけるステランティスの中型電動LCVシリーズ(eK0)の生産は、2026年第4四半期に開始する」

BBCの報道によると、同工場は4月に閉鎖される予定であるが、ステランティスは具体的な日付を明らかにしていない。

ステランティスの前CEOであるカルロス・タバレス氏は、英国政府とのゼロ・エミッション車(ZEV)規制をめぐる論争の一環として工場閉鎖をほのめかし、それからわずか数か月後に実行へ移した。

現在、英国の自動車業界全体で新たな協議が行われているZEV規制について、タバレス氏は「当社のビジネスモデルに深刻な打撃を与えている」と述べた。自動車メーカーはEVの販売を迫られているが、購入者へのインセンティブは提供されておらず、業界はEVへの関心の低下に苦慮している。

同氏は、すべての業務を1つの拠点に移すことで英国における生産拠点が「統合」され、「生産効率の向上に寄与する可能性がある」とした。この決定により、今年のZEV規制で26%に引き上げられるEV販売比率の目標を達成できるとも述べた。

4月からはルートン工場の生産設備がすべてエルズミアポートに移され、そこで5000万ポンド(約95億円)以上を投じてアップグレードされる予定だ。エルズミアポート工場は1億ポンド(約190億円)の投資を受け、昨年EVの生産を開始した。

ルートン工場閉鎖の決定により、従業員1100人の雇用が危ぶまれるが、エルズミアポートに異動できるのは数百人のみだという。影響を受ける従業員を対象に労使協議が始まっており、再訓練が施されるか、場合によっては近隣企業での仕事が紹介される可能性もある。

11月の閉鎖発表後、労働組合の幹部らは、タバレス氏の突然の辞任の数日前になされたものであることを理由に、ステランティスに決定の撤回を求めた。

英国の労組ユナイト(Unite)は、閉鎖の決定を「タバレス氏の失敗した戦略の最後の一例」と呼び、「会社が新しいCEOと新しい方向性を模索し始めた今、この決定は中止されなければならない」と述べた。

これに対し、ステランティスはジョン・エルカン会長と暫定執行委員会の指導の下、「すでに発表済みの進行中のプロジェクトの継続」を約束した。

ユナイトは、タバレス氏の後任が任命される(2025年前半の予定)まで、これまでのすべての主要な決定を停止すべきだと主張していた。

ステランティスは6日、ユナイトとの「必要な協議期間」が終了し、「詳細かつ建設的なものだった」と発表した。AUTOCARへの声明では、「従業員が将来に向けて最善のアドバイスを受けられるよう、すべての利害関係者と協議している」とした。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ウィル・リメル

    Will Rimell

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    小林俊樹

    Toshiki Kobayashi

    1964年生まれ。1985年よりグラフィティにてカメラマン活動をスタート。10年ほど在籍し、その間にライディングスポーツ、レーシングオンなどレース専門誌、レーススポンサー、鈴鹿サーキットのオフィシャル撮影を担当。1995年にはアーガスへ入社、北畠主税氏を師事して13年ほど在籍。自動車のカタログや専門誌、ライフスタイル誌などの撮影を担当。その後2009年にフリーランスとなり、現在に至る。

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