アストン マーティン EVに「V12エンジン」のような振動ボディを実現か 運転の喜びを追求

公開 : 2025.02.11 06:05

アストン マーティンが2030年までに投入予定の量産EVでは、V12エンジン搭載車のような「振動」を再現する可能性がある。新CEOの指揮下で、エモーショナルな運転体験を模索している。

V12エンジン搭載車に乗っているような感覚

アストン マーティンは、将来の高性能EVに振動ボディ構造を採用し、V12エンジン搭載スポーツカーのような運転体験を再現する可能性がある。同社のエイドリアン・ホールマークCEOが示唆した。

アストン マーティンは現在、初の量産EVを開発中で、2030年までに発売予定である。

アストン マーティンの将来のEVでは、V12エンジンの振動を模倣・再現できる可能性がある。
アストン マーティンの将来のEVでは、V12エンジンの振動を模倣・再現できる可能性がある。

米EV新興企業ルーシッドと提携し、同社の電気モーターやインバーターなどの技術を使用する予定だが、ホールマーク氏は「真のアストン」になると主張している。

ホールマーク氏は、アストン マーティンの既存モデルに匹敵するような高性能のEVをどう実現するかという質問に対し、ヒョンデアイオニック5 Nなどに搭載されているようなフェイクのギアチェンジ機構やエンジン音は使用しないと答えた。

同氏は最近、メルセデスAMG EQSを運転したところ、「希望が持てた」という。

「フェイクのギアチェンジやエンジン音がなくても、共鳴する。感情的な意味ではなく、物理的な意味でだ。物理的に共鳴する」

「ヴァルキリーのV12エンジン、あるいはレース仕様のエンジンのテレメトリーをマッピングし、周波数を測定してそれをクルマのボディ構造に組み込み、スロットル位置とリンクさせ、電気周波数ノイズを抑制すれば、まさにヴァルキリーや他の12気筒車に乗っているような感覚になるだろう」

「つまり、偽りのノイズではなく、内燃機関から得られる周波数でボディやその他の構造を実際に振動させることで、感情的なつながりを生み出すことができる」

また、ホールマーク氏は、高性能EVの重要な目標は軽量化であると示唆し、そこで重要な役割を果たすのは全固体電池であると述べた。ただし、アストン マーティンの量産EVの第一弾には全固体電池が導入されることはないと明言した。

「(高性能EVを作る上で)最大の課題は重量だ。同じ性能レベルであっても、軽いクルマの方が良いということは周知の事実だからだ」

「バッテリーEVの問題は、本来の軽量高性能車から得られるダイナミックな感覚を得るのが非常に難しいことだ。質量は敵であり、EVでは質量がDNAの一部なのだ」

ホールマーク氏は、バッテリーが最大の課題であり、「バッテリーがもたらす負荷を補うほど、他の部分で十分な削減はできない」と述べた。

しかし、全固体電池はゲームチェンジャーになり得るという。「バッテリー自体が軽くなるだけでなく、冷却システムや保護材も少なくて済む」からだ。

また、構造や部品の軽量化など、新しい技術と組み合わせれば重量の差を縮めることができるとし、さらに「ステアリング、サスペンションのジオメトリ、電子制御に関する技術によって、おそらく動的に得られる残りの部分を再現できるだろう」と提案した。

高性能な高級EVを製造するいくつかの企業は、顧客の獲得に苦戦している。アストン マーティンの顧客が実際にEVを求めているのかと尋ねられたホールマーク氏は、顧客には2つのグループがあると指摘した。

「2つの異なる顧客層がいる。EVを望まない顧客もいる。彼らは単に望んでいないのではなく、深い情熱からEVを嫌っている。また、一部の顧客は、EVを買うよう勧められていると感じているため、嫌っている」

「『ノー』という言葉ほど、マルチミリオネア(億万長者)を刺激するのにうってつけのものはない。当社の顧客のほとんどはマルチミリオネアであるため、『V12は無理だ。700馬力以上のクルマは無理だ』と伝えると、彼らは本当にそれを欲しがるだろう」

「しかし、EVを支持する顧客層も存在し、その規模は拡大しつつある。教育や情報提供が進み、現実が明らかになるにつれて、さらに変化していくだろう」

「『PHEVなど決して必要ない』と言っていた熱狂的なガソリン車ファンたちが、今では『完全なガソリン車が手に入らないのであれば、PHEVは素晴らしいソリューションだ』と言い始めている」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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