沼にハマる 『レトロモビル2025』でフランス車の魅力に迫る 高い技術力と芸術的デザインの融合
公開 : 2025.02.15 18:05
フランス車の魅力とは? その答えを探るべく、2月5~9日にかけてパリで開催されたクラシックカーイベント『レトロモビル(Retromobile)』を訪問。シトロエンDS 19や最新EVに共通するテーマを見つけた。
パリを彩るクラシックカーの祭典
フランス車には何か惹きつけるものがある。ありふれた機械を、人を魅了するものに変える、目に見えない素質だ。
それを明確に定義するのは難しいが、もしその魅力の源泉をどこか1つ挙げるなら、それは間違いなく『レトロモビル(Retromobile)』である。パリ郊外のアンドレ・シトロエン公園の近くで開催されるこのイベントは、大手小売業者、オーナーズクラブ、メーカーの支援を受けている大規模なクラシックカーの祭典である。ここでは、質素なプジョー205から新型ポルシェ911 GT3、さらには元F1ドライバーのミハエル・シューマッハのマシンまで、実にさまざまなクルマを見ることができる。

今年の大きな呼び物の1つはルノーのブースで、新型のEVコンセプトカー「フィランテ」が初めて一般公開された。これはEVの効率性における新記録の樹立を目指したモデルだが、高度なエンジニアリングだけが目玉ではない。見た目もかなり格好いいのだ。
「すべてがよりシンプルで、より洗練されている」と、ルノーのデザイン責任者ジル・ヴィダル氏は説明する。このワンオフの作品は、高い技術目標を達成するだけでなく、見栄えも良くする必要があった。
この精神、つまり世界トップクラスのエンジニアリングと驚異的なデザインの融合こそが、展示されている多くの象徴的なフランス車に共通する特徴である。
例えば、オリジナルのシトロエンDSを例に挙げてみよう。その有名なハイドロニューマチック・サスペンションは、高級サルーン市場でメルセデス・ベンツに匹敵する存在となる上で大きな役割を果たしたが、人々の心を捉えたのはその型破りなデザインであった。 1956年10月のAUTOCARの特派員は、その後輪について「これ以上後ろに置くことはできず、座席もホイールベース内にこれ以上置くことはできない」と記しているほど、そのプロポーションは見事であった。
1959年にシトロエンの広告マン、クロード・ピュエッシュが、DSの乗り心地を表現するために、車輪の代わりに巨大な風船を装着するという提案をしたことで、アート作品への転換が完成した。これは、このモデルの不変のイメージの1つであり、レトロモビルの目玉として忠実に再現されたことで多くの観客を集めていた。
芸術的な趣向は、フランスの道路を走るクルマだけに留まらない。DSのコーナーのすぐ近くには、1972年のマトラMS120Dグランプリカーが展示されているが、実に見事な造形である。フロントのインテークからリアスポイラーまで、まるで空気の流れを手でなぞっているかのような感覚の流線型だ。
その先には、同じ年に英国で製造されたBRM P160Bがある。こちらの方が競争力のあるレーシングカーだが、奇妙な角度や突起があちこちにあり、美しさでは遠く及ばない。
ラリーカーも負けてはいない。会場の片隅にひっそりと置かれているジャン・ラニョッティの1980年代のルノー5マキシターボは、フォグランプを1つや2つではなく、なんと6つも備えており、まばゆいばかりだ。ムッシューがそれほど視界を必要としていたとは思えないので、ボンネットの先端に2つ付いた鼻のような突起は、ターボの圧倒的なパフォーマンスを暗示する、過剰さの表現なのかもしれない。
フランスで愛されるサンクについて言うと、ルノーのブースは大騒ぎだった。人々は真新しいEVモデルに群がり、感嘆の声を上げている。「C’est magnifique(素晴らしい)」とある男性が家族に言うと、子供たちも「C’est magnifique!(素晴らしい!)」と同意する。
我々はデザインの新時代の入り口に立っているようだ。もしそれが、レトロモビルで見られるような、最高に素晴らしく、そして実に奇妙なフランス製マシンからインスピレーションを得ているのなら、大歓迎だ。
画像 見た目だけではない独特の世界観を築き上げる、愛おしきフランス車【レトロモビル2025の展示車両(一部抜粋)を写真で見る】 全16枚