広州汽車、欧州で販路拡大へ 格安のコンパクトEV『アイオンUT』英国導入

公開 : 2025.04.11 06:45

トヨタやホンダのパートナーである中国国営自動車メーカーのGAC(広州汽車集団)が、英国への参入計画を明らかにしました。ミラノで設計された2車種のEVを発売し、シェア拡大を目指します。

アイオンブランドで2車種のEVを展開

トヨタホンダの合弁パートナーであり、中国最大の自動車メーカーの1つであるGAC(広州汽車集団)が、欧州市場での販路を拡大し、新たに英国への参入に向けて準備を進めている。

GACは昨年200万台以上のクルマを販売した中国国営企業だ。欧州でデザインされた2車種のEVを英国に投入し、シェア獲得を目指している。

GACが英国に投入するアイオンUT
GACが英国に投入するアイオンUT    AUTOCAR

2車種のうち小型のモデルは、メーカー自ら「中国版ミニ」と銘打った『アイオンUT』である。都市部での通勤を想定して設計されているが、フォルクスワーゲンID.3と比べてわずかに大きい。これは、中国の消費者が好む車内空間の広さを考慮した結果である。

本国ではわずか7500ポンド(約140万円)相当から購入できるが、英国では輸送コストと税金がかかるため、はるかに高額になることが予想される。

GACの最高執行責任者(COO)であるトーマス・シェメラ氏(ヒョンデBMWで要職を歴任)は、アイオンUTが難しい市場で成功を収めるには、競争力のある価格設定が不可欠との考えを示した。

「価格設定の観点から見ると、ブランドが確立された競合他社よりも高い価格設定にするのは非常に難しいでしょう」と同氏は言う。

「当社は賢明かつ巧妙に、自社のモラルを世に広め、同時にブランドを構築しなければなりません。製品そのものではなく、キャンペーンも活用する必要があります」

「ブランド価値が低いレベルにある限り、それを高めるためにあらゆる努力をしなければなりません」

「段階的に価格を引き上げることも可能です。しかし、まずは信頼を築くことが先決です」

そのため、アイオンUTは英国では2万ポンド(約380万円)台半ばから後半で発売される見込みである。これはID.3(3万795ポンド=約580万円)を大幅に下回り、下位セグメントのルノー5に近い価格設定となる。

ハイブリッド車も計画中

アイオンUTは、フロントに搭載された最高出力136psの電気モーターと60kWhのリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを使用し、航続距離は最大430kmに達する。

車内では、14.6インチの大型インフォテインメント用タッチスクリーンで、エアコンなどの主要機能を操作する。また、車速や航続可能距離などの重要な情報を表示する8.8インチのデジタル計器盤も装備されている。

GACが英国に投入するアイオンUT
GACが英国に投入するアイオンUT    AUTOCAR

中国のトレンドに合わせ、前部座席はフラットに折りたたむことができ、後部座席とベッドのようなレイアウトが可能だ。

インテリア全体に硬質プラスチックが使用されているが、質感を高める工夫が施されている。例えば、ウインドウシルはステッチ加工されたレザーのような印象を与え、ドア内張りはカーボンファイバーを模したような幾何学的な仕上げとなっている。

アイオンUTと同時に発表されたのは、『アイオンV』で、テスラモデルYと競合する電動SUVである。最高出力227psのモーターと90kWhのLFPバッテリーを搭載し、航続距離は最大520kmとされる。

GACの英国での発売日は未定だが、シェメラ氏はAUTOCARに対し、「間もなく」発売すると語った。

同氏は、英国がポルトガル、ポーランド、イスラエルと並ぶGACの第二の成長市場になると説明した。

また、英国はさまざまな理由からGACにとって「非常に重要」な地域だという。英国のEV市場は活発で、昨年の新車販売台数の5台に1台がEVであった。

しかし、GACはEVに加えて、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、そして「場合によっては」純エンジン車も発売する計画である。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    役職:編集アシスタント
    2022年よりAUTOCARに加わり、ニュースデスクの一員として、新車発表や業界イベントの報道において重要な役割を担っている。印刷版やオンライン版の記事を執筆し、暇さえあればフィアット・パンダ100HP の故障について愚痴をこぼしている。産業界や社会問題に関するテーマを得意とする。これまで運転した中で最高のクルマはアルピーヌ A110 GTだが、自分には手が出せない価格であることが唯一の不満。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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