毎日の道具のようなクルマ? BMW M5 ツーリング Mを象徴する車内 車重を感じない加速

公開 : 2025.05.08 19:05

毎日の道具のようなクルマであるべきだと、開発者が主張するM5 ツーリング 総合728ps Mモデルを象徴する車内 車重を感じさせない加速 効果的にカーブを縫える UK編集部が試乗

仕事や毎日の暮らしで道具のようなクルマ

新しいBMW M5 ツーリングに対し、BMW M モータースポーツ社で研究開発部門を取り仕切るディルク・ハッカー氏は、次のように口にした。「M5は、仕事や毎日の暮らしで道具のようなクルマであるべきだと、意識しました」

多くのクルマ好きがM5へ期待する姿は、実際の顧客や、BMWの開発担当者とは僅かに異なるのかもしれない。筆者が理想とするのは、V8エンジンを積んで2007年に登場した、E90型M3のようなM5だ。当時は、M3としては大きすぎるという声もあったが。

BMW M5 ツーリング(英国仕様)
BMW M5 ツーリング(英国仕様)

最新のG60/G61型M5は、筆者の希望以上に大きくなった。ステーションワゴンを選べるのは喜ばしいものの、四輪駆動でプラグイン・ハイブリッドにもなった。あらゆるシーンへ備えて。

英国価格は、11万3405ポンド(約2211万円)から。数年後の残存価値は大きく目減りするかもしれないが、それはこのクラスではライバルも同じだ。

総合728ps Mモデルを象徴する車内空間

エンジンは、4.4LのV型8気筒ツインターボで、5600rpmから6500rpmで585psを繰り出す。8速AT内には、197psを発揮する電気モーターが組まれている。システム総合での最高出力は、728psに達する。

駆動用バッテリーは18.6kWhと大きく、モーターだけで64kmを走行可能。ちなみに、この容量はバッテリーEVのBMW i3と殆ど変わらない。

BMW M5 ツーリング(英国仕様)
BMW M5 ツーリング(英国仕様)

全長は大台超えの5096mm。フェンダーは拡幅され、全幅は1970mmと通常の5シリーズより70mm広い。M5 ツーリングの車重は2550kgあり、サルーンより40kg重い。

車内は、現代のMモデルを象徴するような空間。身体を包み込み快適なシートに、タッチモニターとは別に用意されたハードスイッチ類、調整域の広い運転姿勢など、細部へのこだわりを強く感じる。内装の素材も、くまなく上質だ。

後席側は広々としていて、荷室は背もたれを倒せば1630Lへ拡大できる。実用性は、通常の5シリーズと遜色ない。テールゲートのリアガラス部分だけ開閉できないのは、残念だと思う。

車重を感じない加速力 効果的にカーブを縫える

公道へ出てみれば、加速力は車重を殆ど感じさせない。パワーウエイトレシオでは、F90型の先代M5 CSへ届かないものの、強力な駆動用モーターが即座にトルクを発揮するため、レスポンスはすこぶる良い。

スポーティなモードを選び、エグゾーストを開放すれば、V8エンジンから聴き応えのある響きが放たれる。普段は秘めていた、個性が表出する。0-100km/h加速は、3.6秒がうたわれる。

BMW M5 ツーリング(英国仕様)
BMW M5 ツーリング(英国仕様)

ドライバーズカーとして軽いとはいえない車重だが、ハッカーの考えでは、M5は普段使いに寄り添ったクルマ。走りを最重視したMモデルがご希望なら、M2をご検討されたい。M5 ツーリングは、目的地まで高速・短時間に、乗員と荷物を移動させる道具だ。

それでも車高は低めで、グリップ力とトラクションは素晴らしい。後輪操舵システムとアクティブリアデフも装備し、効果的にカーブを縫っていける。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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