【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#6 大貴族号は没落貴族!

公開 : 2025.04.25 12:05  更新 : 2025.05.01 10:38

好き好き、白サビ・ドドメ色!

タコちゃん「運転席と助手席もだいぶ傷んでますし、このあたり(運転席ドアの内張り)は、アーマオールとか、外装に使う艶出し剤を塗っちゃったみたいですね」

そうか、それで下品にテカテカ見えるのか。

ボルドーの本革シートがグニャグニャと波打ち、ドドメ色に変色!
ボルドーの本革シートがグニャグニャと波打ち、ドドメ色に変色!    清水草一

もちろん、新車時は大貴族感プンプンだったのだろう。美しいままのリアシートを見ればそれがよくわかるが、全体的には、18年の時を経て、ごく自然に没落したようだ。

んでも、そんなことは枝葉末節。なにしろエンジンはちゃんとかかるし、ウィンドウもサンルーフもちゃんと動くし、なによりデュオセレクト(セミAT)のクラッチ残量が85%なんだから!

本革シートがドドメ色だろうと、ドア内張りがアーマオール(推定です)でテカテカだろうと、走行には一切支障ナシ! 増してや時計の針の緑青なんて屁でもない!

いやむしろ、私はこの没落感を望んでいた。世間は、200万円の激安中古マセラティに、鬼のような故障の連発や、触っただけでスイッチが取れまくるようなボロさを期待するだろう。それはもう、フェラーリランボルギーニに車両火災を期待するのと同じだ。期待に応えて大衆を喜ばせるのがスターの義務である。

200万円なのにピカピカでビンビンのマセラティなんか乗ったって、誰も喜ばない! 障害がなかったらロマンにならない! その障害がエンジン大爆発とかデュオセレクト即死じゃなく、ドアモールの白サビや本革シートのドドメ色ならぜんぜんオッケー! 好き好き、白サビ・ドドメ色!

(つづく/毎週金曜日昼頃公開予定)

*5月1日追記:次回は5月9日公開予定となります。2日公開分はお休みいたします。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    清水草一

    Souichi Shimizu

    1962年生まれ。慶応義塾大学卒業後、集英社で編集者して活躍した後、フリーランスのモータージャーナリストに。フェラーリの魅力を広めるべく『大乗フェラーリ教開祖』としても活動し、中古フェラーリを10台以上乗り継いでいる。多くの輸入中古車も乗り継ぎ、現在はプジョー508を所有する。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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