【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#23 18歳でハゲました!
公開 : 2025.11.21 12:05
自動車はロマンだ! モータージャーナリストであり大乗フェラーリ教開祖の顔を持つ清水草一が『最後の自動車ロマン』をテーマに執筆する、隔週金曜日掲載の連載です。第23回は『18歳でハゲました!』を語ります。
男鹿半島遠征、トラブルなしで完遂!
大貴族号(筆者の所有する先代マセラティ・クアトロポルテ)による男鹿半島遠征は、まったく何のトラブルもなく完遂された。総走行距離約1420km、ガソリン給油量180L、燃費は約8km/Lだった。
東京に戻って気づいたのは、サスペンションの『ガツン!』という突き上げが減ったことだ。出発時はジョイントを越えるたびにガツンガツン来ていたが、いつの間にかかなり少なくなった。まだ左リアだけたまに出るけど、納車前に行った四輪サス取り付け部のラバー交換がなじんできたのだろうか。よかった。

しかし、課題はまだまだ残っている。
ひとつは内装のベタベタだ。と言ってもこれは、ただベタベタしているだけなので、走行には問題なし。とりあえず先送りして、そのうちじっくり取り組もう。
問題はボディの塗装である。
実は男鹿遠征の出発直前、塗装のハゲが発見された。エンジンフード先端の一部で、表面のクリア塗装が浮いてパリッと剥がれていたのだ。出発前日くらいにパリッと行ったらしい。放っておけばどんどん広がりそうな気配だ。
これはまずい……。
自分の愛車では初体験!
ボディのクリア塗装がハゲているクルマは、そんなに珍しくはない。古いクルマを野外に置いておけば、いつかは必ずハゲる。しかし自分の愛車では初体験だ。
現在所有しているフェラーリ328GTSは、すでに36歳というご高齢だが、生まれてこのかたずーっと屋根付きガレージで保管されていたので(たぶん)、そういった症状はまったくない。

直射日光や雨風にさらされると、大抵のモノは風化する。室内使用が前提のプラスチック製品なんか、外に置いておくと割とすぐボロボロになる。
自動車は屋外での保管を前提に作られているが、塗装の耐久性には限界がある。大貴族号は2007年製なので18歳。イタ車はハゲるのがちょっと早いかもしれない。
そう言えば、安ド二等兵(弊社スタッフ)が以前乗ってたアルファ166も、塗装の一部がハゲたはず。あのクルマは何歳でハゲたのか。
これぞイタリア車魂!
安ド「えーと、166は確か2000年製で、塗装がハゲ始めたのは手放す1~2年前なので、2015年くらいだったと思います!」
オレ「そうか。15歳でハゲるとは若いな!」

安ド「あの時は、まず運転席のパワーウィンドウが上がらなくなって、とりあえずビニールを貼って塞いでたんですよ。で、修理に持ってってテープを剥がしたら、一緒に塗装の表面がベロッと剥がれちゃったんです」
オレ「そうか。パワーウインドウの故障が塗装のハゲに連鎖したなんて、あまりにもイタ車っぽくて涙が出るな!」
安ドが乗っていたアルファ166は、3リッターV6、左ハンドルの6速MT(並行輸入モノ)だった。彼はそこにほれ込み、100万円くらいで購入したが、最初からセンターディスプレイが映らなかった。自動的にオーディオも故障。しょうがないので約4年間、ずっとスマホのちっこいスピーカーで音楽を聴いて過ごしたという。
さらに涙ぐましかったのはエアコンだ。エアコンは物理ボタンで操作できたが、ディスプレイが映らないので、設定温度がわからない。そこで安ドは、出てくる風を手に当てて温度を判断していた。ストーブ列車みたいに……。
それでもディスプレイを修理しなかったのは、彼が貧乏だったからである。ディスプレイが映らなくてもクルマは走る! これぞイタ車魂!
というか、安ドはすでに10年前、貧乏の崖っぷちで自動車ラスト・ロマンを満喫していたのだ! 真の勇者と言えよう。尊敬。
安ドの166に比べると、大貴族号は恵まれている。センターディスプレイはまだ映るし(10円ハゲあり)、塗装がハゲ始めたのは18歳なんだから! 元気で長生きしてね、大貴族お爺様!
それにしてもこのハゲ、どうしようか。
(つづく/隔週金曜日掲載、次回は12月5日金曜日公開予定)



























