【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#21 イタ車名物ベタベタ病!

公開 : 2025.10.24 12:05

自動車はロマンだ! モータージャーナリストであり大乗フェラーリ教開祖の顔を持つ清水草一が『最後の自動車ロマン』をテーマに執筆する、隔週金曜日掲載の連載です。第21回は『イタ車名物ベタベタ病!』を語ります。

こんなに快適だったのか!

すでに秋が深まっているが、話は依然、7月下旬の大貴族号(先代マセラティクアトロポルテ)による男鹿半島遠征記である。名勝・笹川流れを通過した我々(私と弊社スタッフの安ド二等兵)は、日本海に沿ってひたすら北上を続けた。

購入から日も浅く、クルマがどれくらい没落しているのかよくわからない状態での遠征だけに、なにもかもが新鮮であり恐怖だった。

大貴族号こと、清水草一所有の先代マセラティ・クアトロポルテで男鹿半島へ遠征!
大貴族号こと、清水草一所有の先代マセラティ・クアトロポルテで男鹿半島へ遠征!    清水草一

安ドの運転時、私は後席に座ってみた。

リアシートは、フロントシートに比べると新車のようにツヤツヤ。エアコンもビンビンに効いてるし、まさに貴族気分であった。さすがはエクゼクティブサルーン。こんなに快適だったのか!

オレ「安ド、このクルマ、意外といいな!」

安ド「意外どころか最高ですよ、殿! 僕はこんなクルマを運転できてシアワセです」

オレも後席でシアワセだった。

そう言えばリアシートには、格納式のアームレストがある。そこに肘を置き、さらに貴族気分を満喫しよう。

私はアームレストを引っ張り下ろした。

その瞬間、『バツン!』という貧乏っぽい音とともに、カップホルダーが飛び出した。ストッパーが死んでいるので、自動的に出てしまうのである。さすが大貴族。

ここが一番ベタベタだよ!

アームレストにはフタがついており、内部は物入になっている。フタを開くと、3つのスイッチがあった。今まで確認していなかったが、なんのスイッチだろう。

オレ「げえっ! このクルマ、後席も電動リクライニングとシートヒーターがついてたわ!」

後席に電動リクライニングとシートヒータースイッチがついていたが……。
後席に電動リクライニングとシートヒータースイッチがついていたが……。    清水草一

安ド「そうですか! さすが大貴族号ですね!」

私は嬉しくなってスイッチに触れたが、その瞬間、思わず手を引っ込めた。

オレ「ひえー、ベタベタだ!」

安ド「あれ、ベタベタしてますか」

オレ「ここが一番ベタベタだよ!」

安ド「隠れベタベタですね!」

安ドはかつてアルファ166に乗っており、経年とともに樹脂内装の塗装が溶けてベタベタになる、イタ車特有の『ベタベタ病』には慣れていたが、私はこのクルマが初めてのベタベタ。フェラーリの場合、348から430までで内装のベタベタが発生するが、自分の所有中にベタベタになったことはなく、すべてベタベタ発生前か処理後の所有だったためである。

先代クアトロポルテは、ベタベタ病末期にリリースされたモデルだ。ベタベタ病は、日本の高温多湿な夏が原因と言われており、発症を免れることはできない。

ただ大貴族号の場合、ダッシュボード樹脂部(=ベタベタ銀座)に関しては、あまりベタベタしていなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    清水草一

    Souichi Shimizu

    1962年生まれ。慶応義塾大学卒業後、集英社で編集者して活躍した後、フリーランスのモータージャーナリストに。フェラーリの魅力を広めるべく『大乗フェラーリ教開祖』としても活動し、中古フェラーリを10台以上乗り継いでいる。多くの輸入中古車も乗り継ぎ、現在はプジョー508を所有する。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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