機能美のワークスマシン クライマックスのTVRグランチュラ(2) 今も一目置かれる理由

公開 : 2025.05.24 17:46

血気盛んな雰囲気 絶妙なバランス

天気は徐々に回復し、アスファルトが乾いてゆく。数周のウォームアップで、しっかり能力を探れるほど親しくなれた。クライマックス・エンジンは、4000rpmを過ぎた辺りから本来の能力が見えてくる。

コーナーからの立ち上がりは、極めてエネルギッシュ。4速MTのギアが唸る。排気音も美しいわけではないが、血気盛んな雰囲気はTVRらしい。回頭性は極めてシャープで、ステアリングには鮮明なフィードバックが伝わる。

TVRグランチュラ Mk2(1961年/ワークスレーサー仕様)
TVRグランチュラ Mk2(1961年/ワークスレーサー仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

レシオはクイックすぎず、過度な緊張感はない。切り込んでいくと、絶妙なバランスが顕になる。リアタイヤは徐々に外へ流れ出し、意欲的なコーナリングを試みたくなる。

もちろん、ドリフトを抑えた大人な走り方も得意。LSDの効きは強く、ステアリングとアクセルの操作には明確さが求められるものの、ドライバーは自信を抱きやすい。近年でも、優れたレーシングカーとして一目置かれる理由がわかる。

ポテンシャルを充分に発揮できなかったTVR

半世紀前の英国には、少量生産のスポーツカーメーカーが複数存在した。その多くと同様に、限られたリソースしかなかったTVRが、ポテンシャルを充分に発揮できなかったことは残念でならない。

グランチュラはMk3へ進化し、1962年のル・マンへファクトリーチームは参戦するものの、3周でリタイアに喫する。TVRが再びフランスのミュルザンヌ・ストレートを突っ走ったのは、その41年後。ブランドの未来は、現在も宙に浮いたままだ。

TVRグランチュラ Mk2(1961年/ワークスレーサー仕様)
TVRグランチュラ Mk2(1961年/ワークスレーサー仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

協力:ペンディン・ヒストリック・カーズ社、ジム・ローリー氏、ロブ・ペニントン氏

TVRグランチュラ Mk2(1960~1961年/公道仕様)のスペック

英国価格:1045ポンド(新車時)/4万5000ポンド(約878万円/現在)以下
生産数:約400台
全長:3505mm
全幅:1625mm
全高:1219mm
最高速度:162km/h(予想)
0-97km/h加速:10.8秒(予想)
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:660kg
パワートレイン:直列4気筒1216cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:96ps/7000rpm
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:4速マニュアル(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

クライマックスのTVRグランチュラの前後関係

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