【今期見通しは未定】トランプ関税の直撃を受けるマツダ!2024年度売上高は過去最高の5兆円越えも

公開 : 2025.05.13 12:25

マツダが2025年3月期の決算説明会を行いました。販売総数は前期比5%増の130万3000台、売上高は過去最高で初めて5兆円を越えた一方、いわゆるトランプ関税の直撃を受け、先行き不透明な状況です。桃田健史による解説と分析です。

マツダとして初めて5兆円越え

マツダが2025年3月期(2024年4月〜2025年3月)の決算説明会を行った。

販売総数は前期比5%増の130万3000台。売上高は過去最高で、マツダとして初めて5兆円を越え、5兆189億円に達した。

北米で販売されているマツダCX-50。これらのSUVが販売好調だ。
北米で販売されているマツダCX-50。これらのSUVが販売好調だ。    マツダ

好調だった理由は、北米で『CX-50』、『CX-5』、『CX-70/90』などSUVの販売が伸びた効果が大きい。

前期といえば、特に日本では、認証不正問題によってマツダという企業のあり方について、世間から厳しい目が向けられた。また、『CX-60』の乗り心地に対してもユーザーの一部から改良を求める声が上がった厳しい年度だった。

そうした状況で、経営陣が説明責任を果たし、サプライヤーや販売店とともにブランドイメージ回復を着実に進めた。

一方で、アメリカでの競争環境が激しさを増す中で、インセンティブ(販売奨励金)の負担が増えたなどの要因で、営業利益は前年比26%減の1861億円にとどまった。

注目された、2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)の見通しについては、『未定』とした。理由については、政治的な思惑による経済への影響を、現時点で合理的に算出できないからだとした。

自動車メーカーが通期決算報告時に、その時点ですでに始まっている期の見通しを公表しないのは、直近ではコロナ禍での対応があった。

日本からアメリカでのアメリカへの輸出のほか、メキシコからもアメリカに輸出しているマツダにとって米国関税(いわゆるトランプ関税)の影響は強烈なのだ。

アメリカ減少分を、いったいどこで稼ぐのか?

会見で毛籠勝弘(もろまさひろ)社長は、日米政府間での交渉が進む中で先入きは不透明な状況だが「雇用と事業を守り抜くことを最優先する」と強い意思を示した。

また、通期の見通しの発表時期については、第1四半期決算を一応の基準とするも「状況によって(公開を)早める可能性もある」とフレキシブルな対応が必要との見解だ。

マツダのメキシコ工場。ここからアメリカへの輸出がトランプ関税の直撃を受ける。
マツダのメキシコ工場。ここからアメリカへの輸出がトランプ関税の直撃を受ける。    マツダ

現実はかなり厳しい。今期の最初の月である4月だけでも、トランプ関税の影響は90〜100億円という数字を、毛籠社長が記者の質問に答えるかたちで示した。

では、こうした状況をどうやって乗り越えようとしているのか。大きく4つある。

1つ目は、部門横断での対応チームを社内に立ち上げて、ステークホルダーへの影響を最小限に抑えることを原則に対応する。

2つ目は、モデルミックスなどの改善。この意味は、国や地域それぞれで販売しているモデルで、需要が多いグレードの販売回転率を上げることだ。近年、ユーザーのハイグレード志向が強まっていたが、その傾向が変わることを想定したもの。

3つ目は、工場の安定操業。日本では広島と山口で現行の70万台維持を目指す。また、米アラバマでのトヨタ合弁工場での生産も安定させる。

そして4つ目は、社内でのコスト削減活動の加速だ。

これらに加えて、アメリカでの減少分を、特にアジア(中国、東南アジア、日本)で埋め合わせるという。

このように現状でマツダに『秘策』はない。日米政府間の交渉の行方と、それに伴う市場変化に対して機敏に対応するしかないと言える。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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